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所得税の基本 ── 経営者が知っておくべき税金の仕組み
税制解説 約14分で読めます

所得税の基本 ── 経営者が知っておくべき税金の仕組み

所得税の計算は4ステップ

所得税は「稼いだ金額」にそのまま税率がかかるわけではありません。4つのステップで段階的に計算されます。この流れを理解すれば、節税の仕組みも見えてきます。

Step 1

所得を計算する

売上(収入)から必要経費を差し引いて「所得」を算出。所得の種類は10種類ある。

Step 2

所得控除を差し引く

所得から各種控除(基礎控除、社会保険料控除、配偶者控除等)を差し引いて「課税所得」を算出。

Step 3

税率をかけて所得税額を計算

課税所得に累進税率(5〜45%)をかけて所得税額を算出。

Step 4

税額控除を差し引く

所得税額から税額控除(住宅ローン控除、配当控除等)を差し引いて最終的な「納付額」を算出。

収入 − 必要経費 = 所得
所得 − 所得控除 = 課税所得
課税所得 × 税率 − 速算控除額 = 所得税額
所得税額 − 税額控除 = 納付税額

10種類の所得

所得税法では所得を10種類に分類し、それぞれ計算方法が異なります。経営者に関係する主な所得は以下の通りです。

所得の種類内容経営者との関連
事業所得事業から得た所得個人事業主の利益
給与所得給与・賞与法人役員の役員報酬
不動産所得家賃収入等不動産投資をしている場合
配当所得株式の配当等自社株式・投資の配当
譲渡所得資産の売却益株式・不動産の売却
退職所得退職金法人役員の退職金
利子所得預金利息等預金利息(源泉分離課税)
一時所得懸賞金、保険金等保険の満期返戻金
雑所得上記に該当しない所得副業収入、年金等
山林所得山林の伐採等山林を所有している場合
ℹ️

個人事業主と法人役員で所得の種類が変わる

個人事業主の利益は「事業所得」ですが、法人化して役員報酬を受け取ると「給与所得」になります。給与所得には給与所得控除が適用されるため、同じ金額でも法人役員のほうが課税所得が少なくなります。これが法人化の大きなメリットの一つです。


所得税の税率 ── 累進課税

日本の所得税は超過累進税率を採用しています。これは、所得が増えるほど高い税率が適用される仕組みです。

2026年の所得税率表

課税所得税率控除額実質税率の目安
〜195万円5%0円5%
195万〜330万円10%97,500円約7〜9%
330万〜695万円20%427,500円約12〜17%
695万〜900万円23%636,000円約17〜19%
900万〜1,800万円33%1,536,000円約20〜27%
1,800万〜4,000万円40%2,796,000円約30〜36%
4,000万円〜45%4,796,000円37%〜

注意: これに加えて**住民税10%復興特別所得税2.1%**が上乗せされます。

超過累進税率の計算例

課税所得が700万円の場合:

所得の区分金額税率税額
〜195万円195万円5%97,500円
195万〜330万円135万円10%135,000円
330万〜695万円365万円20%730,000円
695万〜700万円5万円23%11,500円
合計700万円974,000円

速算表を使うと: 700万円 × 23% − 636,000円 = 974,000円(同じ結果)

さらに住民税: 700万円 × 10% = 700,000円

所得税+住民税の合計: 約167万円(課税所得700万円に対して約24%)


所得控除の全15種類

所得控除は「課税所得を減らす」ことで税負担を軽減する仕組みです。使える控除は全て使い切ることが最も確実な節税です。

人的控除

控除名控除額要件
基礎控除48万円(所得2,400万円以下)全員
配偶者控除最大38万円配偶者の合計所得金額48万円以下
配偶者特別控除最大38万円配偶者の合計所得金額48万〜133万円
扶養控除38〜63万円扶養親族の年齢等による
障害者控除27〜75万円本人・配偶者・扶養親族が障害者
寡婦控除27万円寡婦に該当する場合
ひとり親控除35万円ひとり親に該当する場合
勤労学生控除27万円勤労学生に該当する場合

物的控除

控除名控除額要件
社会保険料控除支払額全額国保、国民年金、健保、厚生年金等
小規模企業共済等掛金控除支払額全額小規模企業共済、iDeCo等
生命保険料控除最大12万円生命保険、医療保険、個人年金
地震保険料控除最大5万円地震保険料
医療費控除超過分(最大200万円)年間医療費が10万円超(所得200万円未満は所得の5%超)
寄附金控除寄附金−2,000円ふるさと納税、認定NPO等
雑損控除損害額に応じて災害・盗難・横領による損害

経営者が見落としやすい控除

💡

この3つの控除を使いこなす

1. 小規模企業共済等掛金控除(iDeCo含む) iDeCoの掛金は全額所得控除になります。個人事業主なら最大月68,000円(年81.6万円)。法人役員でも月23,000円(年27.6万円)が控除可能です。

2. 医療費控除 家族全員分の医療費を合算できます。歯科矯正(治療目的)、レーシック手術、通院のための交通費なども対象です。

3. ふるさと納税(寄附金控除) 実質2,000円の負担で地域の特産品がもらえます。所得が高いほど控除上限額が大きく、高所得の経営者には非常にお得です。


青色申告特別控除

個人事業主にとって最大の控除が青色申告特別控除です。

控除額要件
65万円複式簿記+e-Taxで電子申告(または電子帳簿保存)
55万円複式簿記で記帳(紙の申告)
10万円簡易簿記で記帳

65万円控除の節税効果

課税所得適用税率65万円控除の節税額(所得税+住民税)
300万円10%+10%約13万円
500万円20%+10%約19.5万円
700万円23%+10%約21.5万円
1,000万円33%+10%約28万円
⚠️

e-Taxでの電子申告が必要

2020年分の確定申告から、65万円の青色申告特別控除を受けるにはe-Taxでの電子申告が必須になりました。紙の申告書を提出すると控除額が55万円に下がります。マイナンバーカードを使ったe-Taxの設定は、確定申告シーズン前に済ませておきましょう。


所得控除 vs 税額控除

この違いを理解しておくと、節税効果の大きさを正確に評価できます。

所得控除税額控除
効果課税所得を減らす税額を直接減らす
節税額控除額 × 税率控除額そのもの
税率との関係高所得者ほど効果が大きい所得に関係なく一定
代表例基礎控除、社会保険料控除住宅ローン控除、配当控除

具体例で比較

所得控除100万円の効果(課税所得500万円、税率20%の場合):

  • 節税額: 100万円 × 20% = 20万円

税額控除100万円の効果:

  • 節税額: そのまま100万円

税額控除のほうが直接的に税金が減るため、効果が大きいです。

主な税額控除

税額控除内容控除額の目安
住宅ローン控除住宅ローン残高の0.7%最大年21〜35万円(新築の場合)
配当控除配当所得の一定割合配当所得の5〜10%
外国税額控除外国で納めた税金外国で課税された金額
認定NPO等寄附金特別控除認定NPOへの寄附(寄附金-2,000円)×40%

確定申告の基本

確定申告が必要な人

対象条件
個人事業主事業所得がある場合は原則必要
法人役員年収2,000万円超、または2か所以上から給与がある場合
給与所得者副業の所得が20万円超の場合
不動産所得がある人家賃収入がある場合
株式等の譲渡所得特定口座(源泉徴収あり)以外の場合
医療費控除を受けたい人年末調整では控除できないため
ふるさと納税のワンストップ特例不適用6自治体以上に寄附した場合

確定申告の期限

区分期限
所得税の確定申告翌年2月16日〜3月15日
消費税の確定申告翌年3月31日
個人事業税の申告所得税の確定申告で自動
住民税の申告所得税の確定申告で自動

申告方法

方法特徴
e-Tax(電子申告)自宅からオンラインで完結。青色65万円控除に必要
税務署に持参窓口で質問しながら提出可能
郵送期限日の消印有効
税理士に依頼費用はかかるが確実。法人役員は推奨

経営者のための所得税節税戦略

個人事業主の節税

節税方法効果優先度
青色申告(65万円控除)年13〜28万円の節税★★★★★
小規模企業共済掛金全額控除(最大年84万円)★★★★★
iDeCo掛金全額控除(最大年81.6万円)★★★★
ふるさと納税実質2,000円で返礼品★★★★
経費の適正計上事業に関連する支出を漏れなく★★★★★
専従者給与配偶者・親族への給与を経費化★★★
減価償却の活用設備投資を経費化★★★

法人役員の節税

節税方法効果優先度
役員報酬の最適化法人税と所得税のバランス調整★★★★★
給与所得控除の活用最大195万円の控除★★★★★(自動適用)
iDeCo掛金全額控除(月23,000円)★★★★
ふるさと納税実質2,000円で返礼品★★★★
NISA運用益非課税★★★
住宅ローン控除最大年35万円の税額控除★★★★(該当者のみ)
💡

まず「控除の使い残し」を確認

節税の第一歩は、使える控除を使い切ること。特に小規模企業共済iDeCoは、加入しているだけで毎年数万円〜数十万円の節税になります。「iDeCo・NISA活用法」で詳しく解説しています。


ふるさと納税の上限額目安

経営者は所得が高いため、ふるさと納税の上限額も大きくなります。

課税所得ふるさと納税の上限額(目安)実質負担
300万円約28,000円2,000円
500万円約60,000円2,000円
700万円約108,000円2,000円
1,000万円約176,000円2,000円
1,500万円約389,000円2,000円
2,000万円約564,000円2,000円

※ 配偶者控除、扶養控除等の有無で変動します。


FAQ ── よくある質問

Q1. 所得税と住民税の違いは何ですか?

所得税は国税(国に納める税金)、住民税は地方税(都道府県と市区町村に納める税金)です。所得税は累進税率(5〜45%)ですが、住民税は所得に関係なく一律10%(都道府県4%+市区町村6%)+均等割(年額約5,000円)です。

Q2. 復興特別所得税とは何ですか?

東日本大震災の復興財源として、2037年12月31日まで**所得税額の2.1%**が上乗せされる税金です。例えば所得税が100万円なら、復興特別所得税は2.1万円です。

Q3. 給与所得控除と青色申告特別控除は両方使えますか?

両方を同時に使うことはできません。個人事業主は青色申告特別控除法人役員は給与所得控除が適用されます。法人化すると青色申告特別控除は使えなくなりますが、給与所得控除(最大195万円)のほうが金額が大きいケースが多いです。

Q4. 経費として認められるのはどこまでですか?

「事業に直接関連する支出」が経費として認められます。売上を得るために必要な支出かどうかがポイントです。プライベートとの区分が曖昧な支出(自宅の家賃、光熱費、通信費等)は、事業使用割合に応じた按分計算で経費にできます。

Q5. 確定申告を間違えた場合はどうすればいいですか?

申告期限内なら訂正申告(再度申告書を提出)、期限後なら修正申告(税額が少なかった場合)または更正の請求(税額が多かった場合)を行います。修正申告の場合は延滞税が発生する可能性があります。

Q6. 法人化した年の確定申告はどうなりますか?

法人化した年は、1月1日〜法人設立前日までの個人事業の確定申告が必要です。設立日以降は法人の事業として扱われるため、個人の事業所得はありません。ただし、法人からの役員報酬(給与所得)は年末調整の対象になります。

Q7. 所得税の節税で最も効果が大きいのは何ですか?

法人化による所得分散が最も効果が大きいです。課税所得が700万円を超えると、法人化して役員報酬を設定することで、年間数十万円〜百万円以上の節税が可能です。法人化が難しい場合は、小規模企業共済+iDeCo+ふるさと納税の3点セットが最も確実な節税策です。


まとめ

所得税の仕組みは「所得→控除→税率→税額控除」の4ステップです。

ポイント内容
計算の流れ収入−経費−控除=課税所得→税率→税額控除→納付額
税率5〜45%の累進課税(+住民税10%)
最優先の節税使える所得控除を全て使い切る
経営者の必須控除小規模企業共済、iDeCo、ふるさと納税
法人化の効果給与所得控除+所得分散で大幅な節税

所得税の理解は、法人化の判断にも直結します。「法人化すべきタイミング」「役員報酬の決め方」とあわせて、自分に最適な税戦略を検討してください。

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