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経営者のiDeCo・NISA活用法 ── 個人の資産形成と節税を両立
節税対策 約20分で読めます

経営者のiDeCo・NISA活用法 ── 個人の資産形成と節税を両立

経営者が活用すべき3つの資産形成制度

経営者には、一般の会社員にはない節税手段が豊富にあります。中でも個人の資産形成と節税を同時に実現できる3つの制度は、経営者なら必ず活用すべきです。

制度節税効果年間上限資金の自由度受取時の優遇
小規模企業共済掛金が全額所得控除84万円低い(退職時等)退職所得控除
iDeCo掛金が全額所得控除最大81.6万円低い(60歳まで引出不可)退職所得控除 or 公的年金等控除
NISA運用益が非課税360万円高い(いつでも売却可)なし(そもそも非課税)

3つ全て活用すると、年間最大525.6万円の投資枠を使えます。

💡

3つの制度は性質が異なる

小規模企業共済とiDeCoは「節税しながら積み立てる」制度。NISAは「運用益を非課税にする」制度です。節税効果を求めるなら小規模企業共済・iDeCo、資金の自由度を求めるならNISAを優先しましょう。


小規模企業共済 ── 経営者の退職金制度

制度の概要

小規模企業共済は、中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する経営者のための退職金積立制度です。

項目内容
運営独立行政法人 中小企業基盤整備機構
加入対象個人事業主、法人役員(従業員20人以下、商業・サービス業は5人以下)
掛金月額1,000〜70,000円(500円単位で設定可能)
年間最大掛金84万円
節税効果掛金全額が所得控除
受取時期廃業、退職、65歳以上で15年以上加入 等
受取方法一括受取 or 分割受取 or 一括+分割の併用

節税効果のシミュレーション

月額70,000円(年間84万円)を掛金として拠出した場合の節税額:

課税所得所得税率年間の節税額(所得税+住民税)30年間の累計節税額
300万円10%約168,000円約504万円
500万円20%約252,000円約756万円
700万円23%約277,200円約832万円
1,000万円33%約361,200円約1,084万円

受取時の税制優遇

受取方法課税方法メリット
一括受取退職所得として課税退職所得控除+1/2課税+分離課税
分割受取公的年金等の雑所得として課税公的年金等控除が適用

一括受取の場合の税額例(掛金累計2,520万円、30年加入):

退職所得控除: 800万円 + 70万円 × (30年-20年) = 1,500万円
課税退職所得: (2,520万円 - 1,500万円) × 1/2 = 510万円
所得税+住民税: 約82万円
実質税率: 約3.3%

掛金の所得控除で約756万円以上節税しながら、受取時の税負担はわずか約82万円。圧倒的にお得です。

⚠️

20年未満の解約は元本割れ

小規模企業共済は20年(240ヶ月)未満で任意解約すると、元本を下回る解約手当金になります。掛金累計の80〜100%が目安です。長期加入を前提に加入してください。なお、廃業・法人の解散による共済金受取は、加入期間に関係なく全額以上を受け取れます。


iDeCo(個人型確定拠出年金)

制度の概要

iDeCoは、自分で掛金を拠出し、自分で運用商品を選んで老後資金を準備する私的年金制度です。掛金が全額所得控除になるため、節税効果が非常に高いです。

経営者のiDeCo掛金上限

立場月額上限年額上限
個人事業主(第1号被保険者)68,000円816,000円
法人役員(企業年金なし)23,000円276,000円
法人役員(企業型DC加入)20,000円240,000円
法人役員(確定給付年金加入)12,000円144,000円
ℹ️

個人事業主が最も有利

個人事業主は月68,000円まで拠出でき、年間81.6万円の所得控除が受けられます。法人化すると月23,000円に下がるため、法人化前にiDeCoの枠をフル活用しておくのも有効な戦略です。ただし、個人事業主のiDeCo掛金上限は国民年金基金との合算枠のため、国民年金基金に加入している場合はその分を差し引く必要があります。

iDeCoの3つの節税メリット

1. 掛金が全額所得控除

課税所得月額掛金年間掛金年間の節税額(所得税+住民税)
300万円23,000円276,000円約55,200円
500万円23,000円276,000円約82,800円
700万円23,000円276,000円約91,080円
500万円68,000円(個人事業主)816,000円約244,800円

2. 運用益が非課税

通常、投資の利益には約20.315%の税金がかかりますが、iDeCoなら運用期間中の利益は非課税です。

3. 受取時の税制優遇

受取方法課税方法
一時金(一括)退職所得として課税
年金(分割)公的年金等の雑所得として課税

iDeCoの運用商品の選び方

商品タイプリスクリターンおすすめの人
元本確保型(定期預金)極めて低い極めて低い節税だけが目的
バランス型ファンド低〜中低〜中運用に手間をかけたくない
インデックスファンド(国内株式)日本経済の成長に賭ける
インデックスファンド(全世界株式)中〜高中〜高長期運用で最もおすすめ
アクティブファンド高い可能性リスク許容度が高い人
💡

全世界株式インデックスが無難

運用期間が長い(20年以上)場合、全世界株式インデックスファンドが最も合理的な選択です。信託報酬が低く(年0.1%前後)、世界経済全体の成長を享受できます。代表的な商品は「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」等です。

iDeCoの注意点

注意点詳細
60歳まで引き出せない事業資金が必要な時に使えない。余裕資金で拠出する
口座管理手数料がかかる月171〜600円程度。ネット証券(SBI証券、楽天証券等)が安い
途中で掛金を変更できる年1回のみ変更可能。最低月5,000円に減額も可
元本保証ではない運用商品によっては元本割れのリスクがある
受取時に課税される退職所得控除や公的年金等控除が適用されるが、完全に非課税ではない

NISA(新NISA) ── 2024年から恒久化

新NISAの概要(2024年1月〜)

2024年から新NISAに移行し、非課税期間が無期限になりました。

年間投資枠非課税保有限度額対象商品
つみたて投資枠120万円1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)長期・分散投資に適した投資信託
成長投資枠240万円上場株式、投資信託、ETF等
合計360万円/年1,800万円

旧NISAとの比較

旧NISA新NISA
年間投資枠120万円 or 40万円360万円
非課税期間5年 or 20年無期限
生涯投資枠600万円 or 800万円1,800万円
枠の再利用不可売却で枠が復活
制度期限2023年まで恒久化
ℹ️

NISAの枠は売却で復活する

新NISAでは、保有商品を売却すると、翌年以降にその分の非課税枠が復活します。例えば100万円で購入した商品を売却すると、翌年以降に100万円の枠が再利用可能になります(取得価額ベース)。

NISAの節税効果

通常、投資の利益には20.315%の税金(所得税15.315%+住民税5%)がかかりますが、NISAなら非課税です。

投資元本運用利回り(年利)運用年数利益通常の税金NISAの税金
360万円5%10年約226万円約46万円0円
360万円5%20年約595万円約121万円0円
360万円5%30年約1,195万円約243万円0円

30年間で約243万円の節税効果があります。

経営者がNISAを活用するポイント

1. 事業資金とは分けて管理

NISAは個人の資産形成制度です。事業の資金はまず事業に投資し、余剰資金をNISAで運用しましょう。事業のキャッシュフローを圧迫してまでNISAに回すのは本末転倒です。

2. 流動性の高さを活用

iDeCoは60歳まで引き出せませんが、NISAはいつでも売却・引き出しが可能です。事業に万が一のことがあった場合の「緊急資金」としての性格も持たせられます。

3. つみたて投資枠を優先

つみたて投資枠(年120万円)は、長期投資に適した低コストのインデックスファンドが対象です。まずはこちらを満額(月10万円)積み立て、余裕があれば成長投資枠(年240万円)を活用しましょう。


3つの制度の使い分け ── 優先順位

資金に余裕がある場合

最優先

小規模企業共済(月7万円/年84万円)

掛金全額が所得控除。退職時に退職所得として有利に受取。経営者の基本装備。

次に優先

iDeCo(月2.3万〜6.8万円)

掛金全額が所得控除。運用益も非課税。60歳まで引き出せないが節税効果は高い。

その次

NISA つみたて投資枠(月10万円/年120万円)

運用益非課税。いつでも売却可能。流動性が高い。

さらに余裕

NISA 成長投資枠(年240万円)

個別株やアクティブファンドにも投資可能。つみたて投資枠と合わせて年360万円。

資金に余裕がない場合の優先順位

月額予算おすすめの配分
月1万円小規模企業共済に全額
月3万円小規模企業共済2万円 + NISA1万円
月5万円小規模企業共済3万円 + iDeCo1万円 + NISA1万円
月10万円小規模企業共済5万円 + iDeCo2.3万円 + NISA2.7万円
月15万円〜3つの制度を可能な限り満額
⚠️

事業の資金繰りを最優先

節税や資産形成のために事業の運転資金が不足しては意味がありません。最低3〜6ヶ月分の運転資金を確保した上で、余剰資金を制度に回しましょう。特に小規模企業共済は途中で掛金を減額できますが、iDeCoは最低月5,000円の拠出が必要です。


法人化前後で変わるiDeCoの戦略

個人事業主の場合

項目内容
iDeCo掛金上限月68,000円(年816,000円)
小規模企業共済月70,000円(年840,000円)
合計の所得控除年間最大165.6万円

法人化後

項目内容
iDeCo掛金上限月23,000円(年276,000円)
小規模企業共済法人役員として継続加入可能(月70,000円)
合計の所得控除年間最大111.6万円

法人化するとiDeCoの掛金上限が大幅に下がります。法人化前にiDeCoの枠を最大限活用し、拠出額を積み上げておくのが賢い戦略です。

法人化後は、iDeCoの減少分を法人の制度(経営セーフティ共済、社宅、出張手当等)でカバーします。


経営者の資産形成シミュレーション

月15万円を30年間積み立てた場合

制度月額年額30年の累計拠出運用利回り5%の場合
小規模企業共済70,000円84万円2,520万円約2,520万円(元本保証)
iDeCo23,000円27.6万円828万円約1,916万円
NISA57,000円68.4万円2,052万円約4,751万円
合計150,000円180万円5,400万円約9,187万円

さらに、30年間の節税効果(課税所得500万円の場合):

制度年間の節税額30年間の累計
小規模企業共済約252,000円約756万円
iDeCo約82,800円約248万円
NISA運用益非課税(税金ゼロ)約549万円(通常課税との差)
合計約1,553万円の節税
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1,500万円以上の節税+資産9,000万円超

月15万円の積立を30年間継続すると、累計約1,553万円の節税をしながら、資産は約9,187万円まで膨らみます。老後資金として十分な金額です。早く始めるほど複利の効果で差が広がります。


金融機関の選び方

iDeCoの金融機関

金融機関口座管理手数料(月額)商品数おすすめ度
SBI証券171円38本
楽天証券171円32本
マネックス証券171円27本
大手銀行400〜600円20本前後

ネット証券がおすすめ。口座管理手数料が最安で、商品ラインナップも豊富です。

NISAの金融機関

金融機関売買手数料投資信託数おすすめ度
SBI証券無料約200本
楽天証券無料約200本
マネックス証券無料約200本
大手銀行一部有料少ない

NISAもネット証券が有利です。NISA口座は1人1口座のため、慎重に選びましょう。


FAQ ── よくある質問

Q1. iDeCoとNISA、どちらを先にやるべきですか?

節税を優先するならiDeCo、資金の自由度を優先するならNISAです。ただし、経営者の場合はまず小規模企業共済を最優先とし、次にiDeCo、余裕があればNISAという順番がおすすめです。

Q2. 法人のお金でiDeCoやNISAに加入できますか?

できません。iDeCoもNISAも個人の制度です。個人の口座から掛金を拠出します。法人から個人にお金を渡すには役員報酬として支払う必要があり、その手取りからiDeCo・NISAに拠出する形になります。

Q3. iDeCoは途中で解約できますか?

原則として60歳まで解約・引き出しはできません。例外として、一定の障害状態になった場合の「障害給付金」や、一定要件を満たす場合の「脱退一時金」がありますが、条件は非常に厳しいです。

Q4. NISAで損失が出た場合、他の利益と相殺できますか?

できません。NISA口座の損失は、他の口座(特定口座等)の利益との損益通算ができません。また、損失の繰越控除(3年間の繰越)も適用されません。これはNISAの数少ないデメリットです。

Q5. 小規模企業共済は法人化しても続けられますか?

はい。個人事業主として加入した小規模企業共済は、法人化後も法人の役員として同一の契約を引き継ぐことができます。解約する必要はありません。

Q6. iDeCoの受取時に小規模企業共済の退職金と合算されますか?

iDeCoの一時金と小規模企業共済の共済金を同じ年に受け取る場合、退職所得控除の計算で勤続年数が重複する部分の調整が必要です。受取年をずらす(例: iDeCoを60歳、小規模企業共済を65歳)ことで、退職所得控除をそれぞれフルに活用できる場合があります。税理士に相談して、最も税負担が少ない受取方法を検討してください。

Q7. NISAの生涯投資枠1,800万円を使い切った後はどうなりますか?

1,800万円の枠を全て使い切った場合、新たな投資はできません。ただし、保有商品を売却すると、翌年以降にその取得価額分の枠が復活します。例えば100万円で購入した商品を売却すれば、翌年以降に100万円の枠が再利用可能です。


まとめ ── 経営者の資産形成チェックリスト

チェック項目確認
小規模企業共済に加入しているか
iDeCoに加入しているか
NISA口座を開設しているか
各制度の掛金・投資額は適切か
事業の運転資金は十分に確保できているか
運用商品の選択は合理的か(低コストのインデックスファンド等)
受取時の税務戦略(受取年の分散等)を検討したか
法人化前後でiDeCoの戦略を調整したか

経営者にとって、事業への投資が最も重要な資産形成です。しかし、それと並行して個人の資産形成も着実に進めることが、長期的な経済的安定につながります。3つの制度を賢く組み合わせて、節税と資産形成を両立させましょう。

所得税の控除全般については「所得税の基本」、法人の節税手段は「法人税の基本」で詳しく解説しています。法人化の検討は「法人化すべきタイミング」をご覧ください。

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