法人税の基本 ── 法人にかかる税金の全体像
法人にかかる税金の全体像
法人化すると「法人税」だけを払えばいいと思いがちですが、実際にはいくつもの税金が課されます。これらを正しく理解しないと、「思ったより税金が高い」という事態になりかねません。
法人にかかる主な税金は4種類です。
| 税金 | 課税対象 | 性質 | 税率目安 |
|---|---|---|---|
| 法人税 | 所得(利益) | 国税 | 15〜23.2% |
| 法人住民税 | 法人税額+均等割 | 地方税 | 法人税×約17% + 7万円〜 |
| 法人事業税 | 所得(利益) | 地方税 | 3.5〜7% |
| 消費税 | 課税売上 | 国税+地方税 | 10%(8%) |
これらを全て合わせた実効税率は、中小企業の場合おおよそ以下の通りです。
| 法人所得 | 実効税率の目安 |
|---|---|
| 400万円以下 | 約22% |
| 400万〜800万円 | 約25% |
| 800万円超 | 約34% |
法人税の税率 ── 2026年4月最新
基本税率
| 区分 | 税率 | 適用条件 |
|---|---|---|
| 中小法人の軽減税率 | 15% | 資本金1億円以下の法人、所得800万円以下の部分 |
| 基本税率 | 23.2% | 所得800万円超の部分 |
軽減税率15%は2027年3月末まで
中小企業の法人税軽減税率15%(本来は19%)は、租税特別措置法による時限措置で、2027年3月31日までに開始する事業年度まで適用されます。延長されなければ2027年度から19%に上がります。
防衛特別法人税(2026年4月〜)
2026年4月から新たに防衛特別法人税が導入されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 課税対象 | 基準法人税額 − 500万円 |
| 税率 | 4% |
| 適用開始 | 2026年4月1日以後に開始する事業年度 |
| 中小企業への影響 | 法人税額500万円以下(所得約2,200万円以下)なら実質影響なし |
計算例:
所得3,000万円の場合:
法人税: 800万円×15% + 2,200万円×23.2% = 120万円 + 510.4万円 = 630.4万円
防衛特別法人税: (630.4万円 − 500万円) × 4% = 5.2万円
中小企業の多くは影響なし
500万円の控除があるため、法人税額が500万円以下(所得約2,200万円以下)の中小企業には防衛特別法人税の負担はありません。多くの中小企業は影響を受けないと考えてよいでしょう。
法人住民税
法人住民税は「法人税割」と「均等割」の2つで構成されます。
法人税割
法人税額に対して課税される地方税です。
| 区分 | 標準税率 |
|---|---|
| 都道府県民税 | 法人税額の1.0% |
| 市区町村民税 | 法人税額の6.0% |
| 合計 | 法人税額の約7.0% |
※ 東京23区は都民税として合計7.0%。自治体によって若干異なります。
均等割
赤字でも必ず支払う固定費です。資本金と従業員数に応じて決まります。
| 資本金 | 従業員50人以下 | 従業員50人超 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 約7万円/年 | 約14万円/年 |
| 1,000万円超〜1億円以下 | 約18万円/年 | 約20万円/年 |
| 1億円超〜10億円以下 | 約29万円/年 | 約53万円/年 |
一人社長で資本金1,000万円以下の法人なら、均等割は年間約7万円です。
赤字でも均等割は発生する
法人住民税の均等割は、法人の所得に関係なく、法人が存在する限り毎年発生します。設立初年度で売上がゼロでも、休眠会社でも(届出をしていなければ)支払い義務があります。
法人事業税
法人事業税は、法人の所得に対してかかる地方税です。特徴的なのは、法人事業税は翌期の損金(経費)になる点です。
税率(中小企業・所得割)
| 所得区分 | 標準税率 |
|---|---|
| 400万円以下 | 3.5% |
| 400万〜800万円 | 5.3% |
| 800万円超 | 7.0% |
特別法人事業税
法人事業税に上乗せされる国税で、税率は法人事業税額の**37%**です。
実効税率の計算
法人にかかる税金の合計(実効税率)を計算してみましょう。
所得500万円の場合
| 税金 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 法人税 | 500万円 × 15% | 75万円 |
| 防衛特別法人税 | (75万円 − 500万円) → 控除内 | 0円 |
| 法人住民税(税割) | 75万円 × 7% | 5.3万円 |
| 法人住民税(均等割) | — | 7万円 |
| 法人事業税 | 400万円×3.5% + 100万円×5.3% | 19.3万円 |
| 特別法人事業税 | 19.3万円 × 37% | 7.1万円 |
| 合計 | 約113.7万円 | |
| 実効税率 | 約22.7% |
所得1,000万円の場合
| 税金 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 法人税 | 800万円×15% + 200万円×23.2% | 166.4万円 |
| 防衛特別法人税 | (166.4万円 − 500万円) → 控除内 | 0円 |
| 法人住民税(税割) | 166.4万円 × 7% | 11.6万円 |
| 法人住民税(均等割) | — | 7万円 |
| 法人事業税 | 400万円×3.5% + 400万円×5.3% + 200万円×7% | 49.2万円 |
| 特別法人事業税 | 49.2万円 × 37% | 18.2万円 |
| 合計 | 約252.4万円 | |
| 実効税率 | 約25.2% |
所得2,000万円の場合
| 税金 | 金額 |
|---|---|
| 法人税 | 398.4万円 |
| 防衛特別法人税 | 0円(控除内) |
| 法人住民税(税割+均等割) | 34.9万円 |
| 法人事業税 | 119.2万円 |
| 特別法人事業税 | 44.1万円 |
| 合計 | 約596.6万円 |
| 実効税率 | 約29.8% |
個人の所得税と比較
所得2,000万円の場合、法人の実効税率は約30%。個人事業主なら所得税+住民税で約50%。法人のほうが約20ポイント低い計算になります。ただし、法人の利益を個人が使うには役員報酬として受け取る必要があり、その段階で個人の所得税が発生します。
法人税の申告と納付
申告期限
| 項目 | 期限 |
|---|---|
| 確定申告 | 事業年度終了日から2ヶ月以内 |
| 申告期限の延長 | 届出により1ヶ月延長可能(利子税が発生) |
| 中間申告 | 事業年度開始日から6ヶ月経過後2ヶ月以内 |
例: 3月決算の法人 → 確定申告は5月31日まで
中間申告
前期の法人税額が20万円を超える場合、中間申告が必要です。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 予定申告 | 前期の法人税額の1/2を仮納付 |
| 仮決算 | 上半期の実績に基づいて申告(前期より業績が悪い場合に有利) |
申告方法
| 方法 | 特徴 |
|---|---|
| e-Tax(電子申告) | 資本金1億円超の法人は電子申告が義務 |
| 紙の申告書を税務署に提出 | 中小企業は紙でも可 |
| 税理士に委任 | ほとんどの中小企業が採用 |
法人税の申告は税理士に依頼が基本
法人税の確定申告書は、別表一から別表十六まで多数の書類があり、個人の確定申告とは比較にならない複雑さです。特に「別表四(所得の金額の計算に関する明細書)」と「別表五(利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書)」は専門知識がないと正確な作成が困難です。法人化したら税理士への依頼はほぼ必須と考えてください。
法人の節税手段 ── 12の方法
経費を増やす(合法的に)
| 方法 | 内容 | 効果 |
|---|---|---|
| 役員報酬の最適化 | 法人と個人の所得分散 | ★★★★★ |
| 出張手当(日当) | 旅費規程に基づく手当。法人の経費かつ個人は非課税 | ★★★★ |
| 社宅 | 法人名義で借りて差額を個人負担。家賃の50〜80%を経費化 | ★★★★ |
| 少額減価償却資産 | 30万円未満の資産を一括経費(年間300万円まで) | ★★★ |
| 経営セーフティ共済 | 掛金全額が損金。年間最大240万円、累計800万円まで | ★★★★ |
| 小規模企業共済 | 個人の所得控除だが、間接的に法人の節税に寄与 | ★★★★ |
税制優遇を活用する
| 方法 | 内容 | 効果 |
|---|---|---|
| 中小企業投資促進税制 | 設備投資の30%特別償却 or 7%税額控除 | ★★★ |
| 研究開発税制 | 研究開発費の最大14%を税額控除 | ★★★ |
| 所得拡大促進税制 | 給与総額を増やすと税額控除 | ★★★ |
利益を繰り延べる
| 方法 | 内容 | 効果 |
|---|---|---|
| 決算賞与 | 決算前に従業員へ賞与を支給。通知だけで未払計上も可 | ★★★ |
| 棚卸資産の評価 | 在庫の評価減を行い利益を圧縮 | ★★ |
| 修繕費の計上 | 資産の修繕を決算前に実施 | ★★★ |
経営セーフティ共済は必須
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は、掛金が全額損金になる非常に強力な節税手段です。月額5,000〜20万円(年間最大240万円)を積み立て、累計800万円まで拠出できます。解約時は40ヶ月以上の加入で全額が戻りますが、**解約返戻金は益金(収入)**になるため、退職金の支給等と組み合わせて受け取るのが一般的です。
赤字の繰越と繰戻し
欠損金の繰越控除
法人の赤字(欠損金)は、翌期以降10年間繰り越して、黒字と相殺できます。
| 事業年度 | 所得 | 繰越欠損金 | 課税所得 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | △500万円(赤字) | 500万円発生 | 0円 |
| 2年目 | 300万円 | 500万→200万円 | 0円 |
| 3年目 | 400万円 | 200万→0円 | 200万円 |
中小企業は繰越欠損金を全額控除できます(大企業は所得の50%まで)。
欠損金の繰戻し還付
前期に法人税を納付していて、当期が赤字になった場合、前期の法人税の一部を還付してもらえます。
還付額 = 前期の法人税額 × (当期の欠損金額 / 前期の所得金額)
繰戻し還付は中小企業の特権
欠損金の繰戻し還付は、資本金1億円以下の中小企業のみが利用できます。赤字の年にキャッシュを回収できるため、資金繰りが厳しい場合に活用しましょう。
決算月の選び方
| 選び方のポイント | 理由 |
|---|---|
| 繁忙期を避ける | 決算直後の2ヶ月は申告作業で忙しくなるため |
| 売上が集中する月を避ける | 利益の予測が立てにくい |
| 設立月から最も遠い月 | 消費税の免税期間を最大化 |
| 3月・12月を避ける | 税理士が最も忙しい時期 |
| 税理士に相談 | 業種・業態に応じたベストな月を提案してもらう |
FAQ ── よくある質問
Q1. 法人税と所得税、どちらが高いですか?
所得の金額によります。課税所得が800万円以下なら法人税率15%、個人の所得税は同じ金額だと20〜23%です。所得が大きくなるほど法人税が有利になります。ただし、法人の利益を個人が使うには役員報酬や配当として受け取る必要があり、その段階で個人の所得税が発生します。
Q2. 赤字なのに払う税金はありますか?
**法人住民税の均等割(約7万円/年)**は赤字でも支払い義務があります。また、消費税の課税事業者であれば、所得が赤字でも消費税の納付が必要です。
Q3. 法人税の確定申告は自分でできますか?
法律上は可能ですが、実務的にはほぼ不可能と考えてください。法人税の申告書は別表が数十枚に及び、法人住民税・法人事業税の申告も別途必要です。記帳ミスや申告漏れがあると追徴税(加算税・延滞税)が発生するリスクもあります。
Q4. 法人税の節税で最も効果が大きいのは何ですか?
役員報酬の最適化と経営セーフティ共済の活用が最も効果的です。役員報酬で法人と個人の所得バランスを調整し、余剰利益は経営セーフティ共済で積み立てることで、トータルの税負担を大幅に減らせます。
Q5. 防衛特別法人税は中小企業にも影響がありますか?
500万円の基礎控除があるため、法人税額が500万円以下(所得約2,200万円以下)の法人には影響ありません。多くの中小企業はこの範囲内に収まるでしょう。
Q6. 法人を休眠させた場合、税金はかかりますか?
休眠届を税務署に提出すれば、法人税・法人事業税の申告は不要になりますが、法人住民税の均等割は自治体によって免除申請が必要です。自治体に確認せずに放置すると、均等割の未納が積み重なるケースがあります。
Q7. 法人税の申告に遅れるとどうなりますか?
以下のペナルティが発生します。
- 無申告加算税: 税額の15〜20%
- 延滞税: 年利最大14.6%
- 青色申告の取消し: 2期連続で期限内申告ができないと、青色申告が取り消される可能性
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 法人にかかる税金 | 法人税+法人住民税+法人事業税+消費税の4種類 |
| 実効税率 | 中小企業で約22〜34% |
| 軽減税率 | 所得800万円以下は法人税15%(2027年3月末まで) |
| 防衛特別法人税 | 2026年4月〜。中小企業の多くは影響なし |
| 赤字でも払う税金 | 法人住民税の均等割(約7万円/年) |
| 赤字の繰越 | 10年間(中小企業は全額控除可) |
| 節税の基本 | 役員報酬最適化+経営セーフティ共済+少額減価償却 |
法人税の理解は、法人化の判断と経営の両方に不可欠です。「役員報酬の決め方」「法人化すべきタイミング」とあわせて、法人経営の税戦略を構築してください。所得税との比較は「所得税の基本」をご覧ください。