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減価償却を活用した節税 ── 中小企業の少額減価償却資産の特例
節税対策 約11分で読めます

減価償却を活用した節税 ── 中小企業の少額減価償却資産の特例

減価償却の基本を理解する

事業で使う資産(パソコン、車、設備など)は、購入した年に全額を経費にできるわけではない。耐用年数に応じて、数年に分けて経費化する。これが減価償却だ。

ただし、中小企業には特例がある。この特例をうまく使えば、購入年に全額を経費にして、大きな節税が可能になる。


減価償却の3つの方法

1. 通常の減価償却

取得価額10万円以上の資産は、耐用年数に応じて定額法または定率法で償却する。

資産耐用年数
パソコン4年
普通自動車6年
軽自動車4年
事務机・椅子8〜15年
エアコン6〜15年
コピー機5年
ソフトウェア(自社利用)5年
建物(鉄骨鉄筋コンクリート)47年

2. 一括償却資産(10万円以上20万円未満)

取得価額10万円以上20万円未満の資産は、3年間で均等償却できる。

例: 15万円のパソコン
→ 毎年5万円ずつ、3年間で償却

3. 少額減価償却資産の特例(30万円未満)

中小企業者等(青色申告)に限り、取得価額30万円未満の資産を購入した年に全額経費にできる。

例: 28万円のパソコン
→ 購入年に28万円を全額経費
⚠️

年間上限300万円

少額減価償却資産の特例は、年間の合計額が300万円までという上限がある。それを超える分は通常の減価償却を行う。


少額減価償却資産の特例を詳しく解説

適用要件

要件内容
対象法人中小企業者等(資本金1億円以下 等)
申告方式青色申告
取得価額30万円未満(税込 or 税抜は経理方式による)
年間上限合計300万円まで
適用期限2026年3月31日まで(延長される可能性大)

税込経理と税抜経理の違い

30万円の判定は、会社の経理方式によって異なる。

経理方式判定基準
税込経理消費税込みで30万円未満
税抜経理消費税抜きで30万円未満

税抜経理の方が有利。税抜29万円(税込31万9,000円)でも特例を適用できる。

💡

税抜経理を選ぼう

消費税の課税事業者なら、税抜経理の方が少額減価償却資産の特例を使いやすい。会計ソフトの設定で変更可能。


減価償却の節税効果シミュレーション

ケース: 期末に28万円のパソコンを5台購入

方法初年度の経費節税効果(実効税率30%)
通常の減価償却(4年定額法)35万円10.5万円
少額減価償却資産の特例140万円42万円
差額105万円31.5万円

初年度だけで31.5万円の節税差が生まれる。

ケース: 決算前に設備投資を前倒し

業績が好調で利益が出すぎている場合、決算前に必要な設備投資を前倒しする。

購入物金額償却方法
ノートPC 4台28万円 × 4 = 112万円少額減価償却資産
モニター 4台8万円 × 4 = 32万円消耗品費(10万円未満)
業務用ソフトウェア25万円少額減価償却資産
事務机・椅子 4セット15万円 × 4 = 60万円少額減価償却資産
合計229万円全額経費

法人税の節税: 229万円 × 30% = 約68.7万円


定額法と定率法の違い

法人は原則として定率法が適用される(届出により定額法も選択可能)。

定額法

毎年同じ金額を償却する方法。

償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率

定率法

初期に多く償却し、年々金額が減る方法。初期の節税効果が大きい

償却費 = 未償却残高 × 定率法の償却率

比較例: 取得価額100万円、耐用年数5年

年度定額法定率法
1年目20万円40万円
2年目20万円24万円
3年目20万円14.4万円
4年目20万円10.8万円
5年目20万円10.8万円

早く経費化したい場合は定率法が有利

ℹ️

建物は定額法のみ

1998年4月以降に取得した建物、2016年4月以降に取得した建物附属設備・構築物は定額法のみ。定率法は選択できない。


中古資産の活用で耐用年数を短縮

中古資産は耐用年数が短いため、短期間で減価償却できる。

中古資産の耐用年数の計算

法定耐用年数の全部を経過した場合:

耐用年数 = 法定耐用年数 × 20%(最低2年)

法定耐用年数の一部を経過した場合:

耐用年数 = (法定耐用年数 - 経過年数) + 経過年数 × 20%

具体例: 4年落ちの中古車(普通自動車)

法定耐用年数: 6年
経過年数: 4年
耐用年数 = (6 - 4) + 4 × 20% = 2.8年 → 2年(端数切り捨て)

定率法の償却率(2年)= 100%。つまり、購入年に全額を経費にできる

💡

4年落ちの高級車は定番の節税策

4年以上経過した中古の普通自動車は、耐用年数が2年になる。定率法なら初年度にほぼ全額を経費にできるため、決算対策として広く使われている。ただし、事業使用割合に注意。


特別償却と税額控除

通常の減価償却に加え、特別償却税額控除を適用できる制度がある。

中小企業経営強化税制

項目内容
対象資本金1億円以下の中小企業者等
対象資産機械装置(160万円以上)、器具備品(30万円以上)等
特別償却取得価額の即時償却(100%)
税額控除取得価額の7%(資本金3,000万円以下は10%)
選択特別償却 or 税額控除のいずれか

中小企業投資促進税制

項目内容
対象資本金1億円以下の中小企業者等
対象資産機械装置(160万円以上)、ソフトウェア(70万円以上)等
特別償却取得価額の30%
税額控除取得価額の7%(資本金3,000万円以下のみ)

特別償却と税額控除、どちらを選ぶ?

比較項目特別償却税額控除
効果のタイミング初年度に大きな節税毎年の税額を直接減額
総節税額変わらない(償却の前倒し)総額で有利になることが多い
赤字の年効果が薄い繰越可能(1年)
おすすめ今期だけ利益が大きい場合安定的に黒字の場合
ℹ️

税額控除の方が得なケースが多い

特別償却は「償却の前倒し」に過ぎず、総額は変わらない。一方、税額控除は税金そのものを減らす。安定して利益が出ている会社は税額控除を選ぶ方が得。


決算対策としての減価償却活用法

利益が出すぎている場合の対策

3ヶ月前

決算の利益予測を行う

顧問税理士と今期の着地見込みを確認する

2ヶ月前

必要な設備投資をリストアップ

来期に予定していた設備投資を前倒しできないか検討する

1ヶ月前

30万円未満の資産を購入

少額減価償却資産の特例を活用。PCやソフトウェアなど

決算月

中古車など大型資産の検討

4年落ち中古車など、即時償却できる資産の購入を検討

決算後

来期の減価償却計画を策定

来期の投資計画と減価償却スケジュールを整理する

注意点

  • 決算月に購入した場合、月割り計算になる(決算月に買っても1ヶ月分しか償却できない)
  • ただし、少額減価償却資産の特例(30万円未満)は月割り不要で全額経費
  • 不要な資産を「節税のため」だけに買うのは本末転倒
⚠️

「節税のための無駄遣い」に注意

利益を減らすために不要な資産を買うのは愚策。100万円の経費で減る税金は約30万円。つまり70万円は純粋に出ていく。本当に事業に必要な投資を前倒しするのが正しい節税。


減価償却資産の管理

固定資産台帳の作成

減価償却資産は固定資産台帳で管理する。記載する内容:

  • 資産の名称
  • 取得年月日
  • 取得価額
  • 耐用年数
  • 償却方法(定額法・定率法)
  • 当期の償却額
  • 期末の未償却残高

会計ソフトの活用

freee、マネーフォワード、弥生などの会計ソフトには固定資産管理機能がある。資産を登録すれば自動で減価償却費を計算してくれるため、手計算のミスを防げる。


減価償却にまつわる節税テクニック

テクニック1: 資産を分割して購入

30万円以上の資産でも、合理的に分割できるものは分けて購入すると特例が使える。

例: デスク(18万円)+ チェア(8万円)= 26万円 → それぞれ別資産として少額減価償却

ただし、セットでなければ機能しない資産(パソコン本体とモニター等)を不自然に分割すると否認リスクあり。

テクニック2: リースの活用

資金の一括支出を避けたい場合、リースも選択肢。オペレーティングリースはリース料全額が経費になる。

テクニック3: 修繕費と資本的支出の判断

建物や設備の修繕は、内容によって処理が変わる:

区分処理具体例
修繕費全額経費原状回復の修理、定期メンテナンス
資本的支出減価償却価値を高める改良、耐用年数の延長

20万円未満の修繕は修繕費として全額経費にできる(形式基準)。


よくある質問(FAQ)

Q1. 少額減価償却資産の特例は個人事業主でも使えますか?

使える。青色申告をしている個人事業主も対象。ただし年間300万円の上限は同じ。

Q2. 10万円未満の資産はどう処理しますか?

取得価額10万円未満の資産は、法人・個人を問わず全額を消耗品費として経費にできる(減価償却不要)。

Q3. 定率法から定額法に変更できますか?

変更可能。所轄税務署に「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を提出する。変更する事業年度の開始日の前日までに提出が必要。

Q4. 減価償却を行わないことはできますか?

法人の場合、減価償却は任意償却。赤字の年は償却しないで翌期以降に繰り延べることも可能(個人は強制償却)。

Q5. 年度の途中で売却した資産はどうなりますか?

売却月までの月割りで減価償却を行い、帳簿価額と売却額の差額を「固定資産売却益」または「固定資産売却損」として計上する。

Q6. 少額減価償却資産の特例が適用できなかった場合は?

一括償却資産(20万円未満なら3年均等償却)を選択するか、通常の減価償却を行う。

Q7. 減価償却費は利益が出ていない年も計上すべきですか?

法人は任意なので、赤字の年は計上しない判断もある。ただし、償却しなかった分は翌期以降に繰り延べられるため、永久に失われるわけではない


まとめ

減価償却は、中小企業の節税において非常に重要な仕組みだ。

特に押さえておくべきポイント:

  1. 30万円未満の資産は少額減価償却資産の特例で即時経費化(年間300万円まで)
  2. 中古資産は耐用年数が短い → 4年落ち中古車は耐用年数2年
  3. 定率法で初期に大きく償却する
  4. 中小企業経営強化税制で即時償却or税額控除を活用
  5. 決算前に必要な設備投資を前倒しする
💡

減価償却は「計画的に」

場当たり的な設備投資ではなく、事業計画と連動した投資計画を立てること。税理士と一緒に、3年先までの減価償却スケジュールを作成すると、税負担の平準化にもつながる。

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