CEO Tax Guide
2026年スタートの防衛特別法人税 ── 経営者への影響と対策
税制解説 約10分で読めます

2026年スタートの防衛特別法人税 ── 経営者への影響と対策

防衛力強化のための増税が始まる

2022年12月の閣議決定を受け、日本の防衛費を**GDP比2%**に引き上げるための財源確保策が段階的に実施される。

その柱の一つが**防衛特別法人税(仮称)**だ。2026年4月以降に開始する事業年度から、法人税に上乗せする形で課される。

経営者にとって「増税」は事業計画に直結する問題。仕組みを正しく理解し、対策を立てておくことが重要だ。


防衛力強化に関する税制の全体像

防衛費の増額に必要な財源は年間約4兆円。これを以下の方法で確保する計画。

財源金額(年間)時期
歳出改革約1兆円強実施中
決算剰余金の活用約0.7兆円実施中
税外収入約0.9兆円実施中
増税約1兆円強2026年〜段階的

増税の3本柱

税目内容開始時期
法人税法人税額に4〜4.5%を付加2026年4月〜
所得税所得税額に1%を付加(復興特別所得税を1%引下げ)2027年1月〜(予定)
たばこ税段階的に引上げ2026年〜段階的

防衛特別法人税の仕組み

基本構造

法人税の付加税として課される。

防衛特別法人税 = (法人税額 − 500万円)× 4%

法人税額から500万円を控除した金額に4%を乗じるのがポイント。

中小企業への配慮

500万円の控除があるため、法人税額が500万円以下の法人は負担ゼロ

法人税額500万円は、課税所得に換算すると:

  • 年800万円以下の部分(税率15%): 800万円 × 15% = 120万円
  • 残り: (500万円 - 120万円) ÷ 23.2% ≒ 1,638万円

つまり、課税所得が約2,400万円以下の法人は防衛特別法人税の負担がない

ℹ️

中小企業の多くは影響なし

中小企業の約9割は課税所得が2,400万円以下と言われている。つまり、多くの中小企業にとっては直接的な負担増はない。ただし、取引先の大企業が値下げ要請をしてくる可能性には注意。


具体的な負担額シミュレーション

課税所得別の防衛特別法人税額

課税所得法人税額控除後防衛特別法人税増税率
500万円75万円0円0円0%
1,000万円150万円0円0円0%
2,000万円398万円0円0円0%
3,000万円630万円130万円約5.2万円約0.17%
5,000万円1,094万円594万円約23.8万円約0.48%
1億円2,254万円1,754万円約70.2万円約0.70%
3億円6,894万円6,394万円約255.8万円約0.85%

※法人税率は800万円以下15%、800万円超23.2%で計算(中小法人の軽減税率適用)。

💡

実効税率への影響は限定的

課税所得5,000万円の法人で増税額は約23.8万円。実効税率にすると約0.48%の上昇に留まる。大企業ほど影響が大きいが、中小企業への影響は比較的小さい。


導入スケジュール

2022年12月

閣議決定

防衛力の抜本的強化を決定。必要な財源確保の方向性を示す

2023〜2025年

歳出改革・税外収入で財源確保

増税に頼らない財源確保を先行して実施

2026年4月

防衛特別法人税の施行

2026年4月以降に開始する事業年度から適用

2027年1月(予定)

所得税の付加税

所得税額に1%を付加。復興特別所得税は2.1%→1.1%に引下げ

2026年〜

たばこ税の段階的引上げ

1本あたり3円ずつ段階的に引上げ


所得税の変更点(経営者個人への影響)

復興特別所得税との関係

現在の復興特別所得税(所得税額の2.1%)を1.1%に引下げ、新たに防衛特別所得税1%を上乗せする。

現在: 所得税 × 102.1%(復興特別所得税2.1%)
変更後: 所得税 × 102.1%(復興1.1% + 防衛1.0%)

合計の付加税率は2.1%で変わらないため、手取りへの影響はない

ただし、復興特別所得税の課税期間が延長される(2037年まで→それ以降も防衛分として継続)。

ℹ️

実質的に所得税の負担は変わらない

復興特別所得税の引下げと防衛特別所得税の新設が相殺されるため、経営者個人の手取りにはほとんど影響がない。主な負担増は法人税側。


経営者が取るべき対策

1. 課税所得の把握と予測

まず自社の課税所得がいくらかを正確に把握する。法人税額が500万円以下(課税所得約2,400万円以下)なら、防衛特別法人税の負担はゼロ。

2. 中小企業の軽減税率の確認

中小法人(資本金1億円以下)は、年800万円以下の所得に対して15%の軽減税率が適用される。この要件を満たしているか確認する。

3. 節税策の見直し

従来の節税策を改めて確認し、適用漏れがないかチェックする:

節税策効果
役員退職金の計画退職金で課税所得を大幅に削減
設備投資の前倒し減価償却・税額控除で課税所得を削減
経営セーフティ共済年240万円を損金算入
中小企業経営強化税制即時償却or税額控除

4. 価格転嫁の検討

大企業との取引がある場合、増税分の適正な価格転嫁を検討する。中小企業庁も「適正な転嫁」を推進している。

5. 事業計画への反映

中期経営計画に増税の影響を織り込み、キャッシュフロー計画を見直す


他の主要な税制改正(2026年度)

防衛特別法人税と合わせて、2026年度の主な税制改正も把握しておく。

改正項目内容
賃上げ促進税制の拡充賃上げ率に応じた法人税の税額控除が拡充
中小企業の少額減価償却資産の特例2年間延長(2028年3月31日まで)
交際費の損金算入特例飲食費の上限を1人あたり1万円に引上げ
GX(グリーントランスフォーメーション)関連カーボンニュートラルに向けた投資促進税制
💡

賃上げ促進税制を活用

従業員の給与を増やすと法人税額が控除される「賃上げ促進税制」が拡充されている。防衛特別法人税の負担を相殺するためにも、積極的に活用を検討すること。


賃上げ促進税制で防衛特別法人税を相殺

賃上げ促進税制の概要(2026年度)

要件控除率
給与総額が前年比1.5%以上増加15%
給与総額が前年比2.5%以上増加30%
教育訓練費が前年比10%以上増加+10%
子育て・女性活躍支援+5%
最大控除率最大45%

控除の上限: 法人税額の20%

具体例

課税所得5,000万円の法人が、給与総額を前年比3%増加させた場合:

給与増加額: 仮に300万円
税額控除: 300万円 × 30% = 90万円
防衛特別法人税: 約23.8万円

→ 賃上げ促進税制の税額控除(90万円)が防衛特別法人税(23.8万円)を
  大幅に上回る

国際比較

主要国の法人税率比較(2026年時点)

法人税率(実効税率)
日本(改正後)約30〜31%
アメリカ約25〜30%(州税含む)
イギリス25%
ドイツ約30%
フランス25%
韓国約22〜27%
シンガポール17%
台湾20%

防衛特別法人税を加えても、日本の法人実効税率は国際的に見て中程度〜やや高い水準


よくある質問(FAQ)

Q1. 防衛特別法人税はいつから支払うのですか?

2026年4月1日以降に開始する事業年度から適用される。3月決算の法人は2026年度(2026年4月〜2027年3月)が初年度。

Q2. 中小企業は本当に負担ゼロですか?

法人税額が500万円以下(課税所得約2,400万円以下)なら負担ゼロ。ただし、利益が増えて課税所得が2,400万円を超えると負担が発生する。

Q3. 個人事業主には影響がありますか?

法人税の付加税なので個人事業主には直接の影響はない。所得税については、復興特別所得税の引下げと防衛特別所得税の新設が相殺され、実質負担は変わらない。

Q4. この増税はいつまで続きますか?

期限は設けられていない。防衛費の増額が恒常的なものとされているため、恒久的な税制となる見込み。

Q5. 防衛特別法人税は損金になりますか?

損金にならない。法人税額に対する付加税であり、法人税本体と同様に損金不算入。

Q6. 連結納税制度を使っている場合はどうなりますか?

グループ通算制度(旧連結納税)においても、各法人の法人税額に基づいて防衛特別法人税が計算される。

Q7. 税率は今後上がる可能性がありますか?

現時点では4%(当面は段階的に4.5%まで引上げの可能性)とされているが、防衛費の増額幅によっては将来的な税率引上げの可能性は否定できない


まとめ

2026年から始まる防衛特別法人税のポイント:

ポイント内容
対象すべての法人(ただし500万円の控除あり)
税率法人税額の4%
中小企業への影響課税所得2,400万円以下なら負担ゼロ
所得税実質負担変わらず(復興特別所得税と入替え)

経営者がやるべきこと:

  1. 自社の法人税額が500万円を超えるか確認 – 超えない場合は影響なし
  2. 既存の節税策の適用漏れを確認 – 経営セーフティ共済、減価償却、税額控除
  3. 賃上げ促進税制を活用 – 増税分を上回る控除が可能
  4. 中期経営計画に反映 – キャッシュフロー計画の見直し
💡

冷静に対応を

「増税」と聞くと不安になるが、中小企業への影響は限定的。むしろ、既存の節税策の見直しや賃上げ促進税制の活用で、増税以上のメリットを得られる可能性がある。税理士と一緒に冷静に対策を立てよう。

他のカテゴリの記事