交際費の損金算入 上限800万円と1万円ルール 中小企業2026
得意先との会食や贈り物にかかる「交際費」。経費にできるかどうかで、払う税金は変わる。まず結論から。
交際費は経費になる? → 原則はならない。でも中小企業(資本金1億円以下)は年800万円までOK。
さらに2024年(令和6年)4月から、1人1万円以下の会食は交際費に入れなくてよくなった。うまく仕分ければ、800万円の枠を減らさずに済む。
この記事は、社長が「自社の会食・贈答をどう経費にするか」をサッと判断できるように、国税庁の情報にもとづいてやさしくまとめた。
情報の時点
本記事は2026年7月時点の情報です。数値は国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」(令和7年4月1日現在法令等)と中小企業庁「交際費課税の特例」で確認しています。適用は会社ごとの事情で変わるので、実行前に必ず顧問税理士にご確認ください。
中小企業は「年800万円まで全額経費」
中小企業(期末の資本金が1億円以下の会社)は、交際費を年800万円まで全額経費(損金)にできる。
月にならすと約66万円。ふつうの中小企業には十分大きい枠だ。
決算期が1年に満たない年は、月割りする。
- 計算:800万円 × 事業年度の月数 ÷ 12
- 例:設立して最初の年が7か月なら → 800万円 × 7 ÷ 12 = 約466万円
資本金1億円以下でも使えない会社がある
資本金5億円以上の大きな会社に株式を100%持たれている子会社は、資本金が1億円以下でも800万円の枠を使えません。グループ会社・子会社の形で経営している人は、自社が当てはまらないか確認してください(国税庁「No.5800 大法人の100%子法人等における特例の不適用」)。
「800万円方式」と「50%方式」、どっちが得?
中小企業は、次の2つから有利な方を選べる。
- ①800万円方式:交際費を年800万円まで全額経費
- ②50%方式:社外との会食費(接待飲食費)の50%を経費
選び方はシンプル。
接待飲食費が年1,600万円を超えないなら、①800万円方式でOK。 ほとんどの中小企業はこちらだ。
| 年間の接待飲食費 | ①800万円方式 | ②50%方式 | 得なのは |
|---|---|---|---|
| 1,000万円 | 800万円 | 500万円 | ①800万円方式 |
| 1,600万円 | 800万円 | 800万円 | どちらも同じ |
| 2,400万円 | 800万円 | 1,200万円 | ②50%方式 |
会食がとても多く1,600万円に近い会社だけ、決算前に税理士と試算すればよい。それ以外は①でまず問題ない(節税全体の考え方は「経営者の節税対策の基本」を参照)。
交際費に「入れなくていい」費用
ここが節税の分かれ目。同じ会食や贈り物でも、次は交際費ではなく別の科目にできる。800万円の枠を減らさずに全額経費にできるので、まず正しく仕分ける。
| 費用 | 入れる科目 | 交際費に入れる? |
|---|---|---|
| 1人1万円以下の社外との会食 | 会議費 など | 入れない(全額経費) |
| 会議のときのお茶・弁当 | 会議費 | 入れない |
| 社員旅行・運動会(社員向け) | 福利厚生費 | 入れない |
| カレンダー・タオル等の記念品 | 広告宣伝費 | 入れない |
| 取引先との高額な接待 | 交際費 | 入れる |
| お中元・お歳暮・慶弔金(取引先向け) | 交際費 | 入れる |
1人1万円ルール(2024年4月から)
社外の人との会食で、1人あたり1万円以下なら交際費に入れなくていい。全額経費だ。
- 計算:会食の合計 ÷ 参加人数
- 例:4人で合計3万8,000円 → 1人9,500円 → 1万円以下なのでOK
- 以前は「1人5,000円以下」。2024年4月から1万円に引き上げられた。
まず「会議費にできないか」を考える
交際費の節税は「使う額を減らす」より「そもそも交際費に該当させない」方が効きます。少額の会食は会議費、PR目的の記念品は広告宣伝費に落とせないか、支出のたびに確認する習慣が効きます。
1万円ルールを使うには、書類を残すのが条件。記録がないと税務調査で否認され、交際費に戻される。次の5つをメモしておく。
- 会食した年月日
- 相手の名前と、自社との関係
- 参加した人数
- 金額と、お店の名前・場所
- 飲食費だと分かる事項
レシートの余白や会計ソフトの摘要欄に「相手・目的・人数」を書く運用にすれば、無理なく満たせる。
社内だけの飲食は対象外
社員や役員だけの飲食(社内飲食費)は、1人1万円以下でも交際費から外せません。社外の取引先が参加しているかが分かれ目です。なお「1万円以下」の判定は、会社の経理方式(税抜か税込か)に応じた金額で見ます。自社がどちらかは税理士に確認してください。
失敗しないための実務ポイント
- 記録が最大の防御。誰と・何のために・何人で、を必ず残す。
- 税務調査で見られるのは「事業に関係あるか」と「金額は妥当か」。私的な飲食を混ぜない。
- 狙われやすいのは、相手が不明な高額会食/社長のプライベート飲食の混入/売上に対して多すぎる交際費の3つ。
- インボイス(消費税)と経費(法人税)は別の話。交際費でも、インボイスを保存していれば消費税の控除は受けられる(詳しくは「インボイス制度の実務対応」)。
調査への備えは「税務調査に備える」、日々の経費の考え方は「これって経費になる?」も参考にしてほしい。
よくある質問(FAQ)
Q1: 交際費に上限はありますか?
中小企業(資本金1億円以下)は年800万円まで、または接待飲食費の50%まで、有利な方を経費にできます。個人事業主に上限はなく、事業に関係があれば全額を経費にできます。
Q2: 1人1万円以下なら何回会食しても経費になりますか?
はい。1回あたり「1人1万円以下」と書類の保存を満たせば、回数の上限はありません。ただし毎回、参加者・目的・人数の記録が必要です。
Q3: 「1万円以下」は税抜と税込どちらで見ますか?
会社の経理方式によります。税抜経理なら税抜、税込経理なら税込で判定します。自社がどちらかは会計ソフトの設定や税理士に確認してください。
Q4: この特例はいつまで続きますか?
令和9年(2027年)3月31日までに始まる事業年度まで適用されます。期限つきの制度なので、その後の扱いは税制改正の動きを確認する必要があります。
Q5: お中元・お歳暮や慶弔金も交際費ですか?
取引先へのお中元・お歳暮・慶弔金(祝儀・香典など)は、原則として交際費です。一方、自社の社員への慶弔金は、社内規程どおりの妥当な額なら福利厚生費として扱えます。
まとめ
- 中小企業は年800万円まで全額経費。多くの会社に十分な枠。
- 1人1万円以下の社外会食は交際費から外せる(2024年4月〜・書類が条件)。まず会議費にできないか確認。
- 接待飲食費が1,600万円に近い会社だけ、800万円方式と50%方式の有利判定を税理士と試算。
- 記録が最大の防御。誰と・何のために・何人か、を都度残す。
税理士に確認すべきこと
・自社の経理方式(税抜/税込)と1万円判定の当てはめ
・グループ会社の場合、800万円の枠が使えるか(大法人の100%子会社に当たらないか)
・接待飲食費が大きい場合、800万円方式と50%方式のどちらが有利か
これらは会社ごとに結論が変わります。最終判断は必ず顧問税理士にご相談ください。
参考(一次情報)
- 国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」(令和7年4月1日現在法令等)
- 中小企業庁「交際費課税の特例」
- 国税庁「No.5800 一定の大法人等の100%子法人等における中小企業向け特例措置の不適用について」
※ 交際費の「原則は経費にならない」と各特例の根拠は、租税特別措置法61条の4です。