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家族を役員にする節税と社会保険の注意点2026|否認されない条件
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家族を役員にする節税と社会保険の注意点2026|否認されない条件

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情報の時点

本記事は2026年8月時点の情報です。令和8年度税制改正で基礎控除が62万円、給与所得控除の最低保障額が74万円(令和8・9年分)となり、扶養親族・同一生計配偶者の所得要件も58万円以下 → 62万円以下に変わりました。国税庁「令和8年度税制改正の大綱(個人所得課税)」・財務省「令和8年度の税制改正」で確認しています。判断は家族構成と実態で変わるため、必ず税理士にご確認ください。

家族を役員にすると、得か損かは「報酬額」で反転する

結論を先に言う。家族を役員にすると世帯の所得税・住民税は下がるが、社会保険料はむしろ増えることが多い。 分かれ目は年収130万円あたりにある。

役員報酬の目安税金への影響社会保険への影響総合
年100万円前後世帯の税負担が下がる扶養に残せる(保険料ゼロ)◎ 最も使いやすい
年130〜200万円さらに下がる扶養から外れ、本人分の保険料が発生△ 逆転しうる
年300万円以上大きく下がる本人分+会社負担分が発生○ 実態があるなら有効

「税金だけ」を見て決めると、社会保険料で取り返されて手取りが減るという失敗が起きる。必ず両方を並べて計算する。


そもそも「役員にする」と何が変わるのか

家族に働いてもらう形は3つある。どれを選ぶかで、ルールがまるごと変わる。

形支払うもの金額変更の自由度主な縛り
従業員として雇う給与いつでも変えられる労働の実態が必要
役員にする役員報酬原則、期首から3か月以内に年1回実態+手続きが必要
(個人事業の場合)専従者青色事業専従者給与届出の範囲内配偶者控除と併用不可

役員報酬のいちばんの特徴は、金額を自由に動かせないことだ。「今期は儲かったから12月に増やす」ができない。ここを知らずに役員にすると、増額分がまるごと経費として認められない。


【最重要】実態がなければ、すべて否認される

税務調査で家族役員が問題になるとき、見られるのは次の3点だ。

1. 職務の実態があるか

名前だけの役員はいちばん狙われる。 「妻を取締役にして月30万円払っているが、実際には何もしていない」というケースは、報酬全額が否認されうる。

実態を説明できる状態にしておく。

  • 何の業務を担当しているか(経理、総務、仕入、現場管理など)
  • どのくらいの頻度で関わっているか
  • 取締役会・経営判断にどう関与しているか
  • その働きを裏づける記録(議事録、業務日報、メール、成果物)

2. 金額が「不相当に高額」でないか

役員報酬は、たとえ定期同額給与でも、不相当に高額な部分は損金になりません。 判定は2つの基準で行われる。

基準何を見るか
実質基準職務の内容、会社の収益、従業員への給与の支給状況、同業・同規模の会社の支給状況
形式基準定款や株主総会の決議で定めた限度額を超えていないか

つまり、同じ仕事をしている従業員より不自然に高い、会社の利益に対して大きすぎると、その部分は経費として認められない。

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形式基準は「決めていない」だけで危ない

株主総会で役員報酬の総額枠を決議していない会社は珍しくない。金額の妥当性以前に、決議も議事録もない状態は形式基準で崩れる。年1回の定時株主総会の議事録は必ず残すこと。

3. 手続きどおり支払っているか

役員報酬で経費にできるのは、原則として次の2つだけだ。

  • 定期同額給与 … 毎月同じ額を支払う。金額の改定は事業年度開始から3か月以内が原則
  • 事前確定届出給与 … 賞与を出したい場合。あらかじめ税務署へ届け出て、届け出たとおりの日に届け出たとおりの額を支払う

事前確定届出給与は1円でも金額がずれる、1日でも支給日がずれると全額アウトになる。家族役員に賞与を出す設計は、実務上いちばん事故が多いところだ。


みなし役員 ── 役員にしていないのに役員扱いになる

「役員にはせず、従業員として給与を払えば自由に金額を変えられる」と考える人は多い。ところが、同族会社の家族はしばしばみなし役員として役員扱いされる。

同族会社の使用人のうち、次の3つをすべて満たし、かつ経営に従事している人はみなし役員になる。

要件内容
1上位から順に株主グループを並べ、合計して初めて50%を超えるグループ(第3順位まで)に属している
2その人が属する株主グループの所有割合が10%超
3本人(配偶者などを含む)の所有割合が5%超

社長の妻が株を持ち、経理を仕切っている——という典型的な形は、これに当たりやすい。みなし役員になれば、給与のつもりで払っていた金額にも定期同額給与のルールがかかる。期中に増やした分は経費にならない。

💡

判定は「株の持ち分」と「経営への関与」の両方

株を1株も持っていない家族なら、要件3を満たさないのでみなし役員にはならない。逆に、株を持っていても経理の入力作業だけで経営判断に関わっていなければ、「経営に従事している」に当たらない。株と実態の両方で考える。


社会保険は、パートとまったく違う扱いになる

役員は「週20時間以上」「月8.8万円以上」といったパート・アルバイト向けの基準では判断しない。 ここを混同している人が非常に多い。

パートとして雇う役員にする
加入の判断労働時間・賃金などの基準法人に継続的に使用され、労務の対価を継続的に受けているか
常勤の場合基準を満たせば加入原則として加入
少額報酬基準未満なら加入しない非常勤で名目的なら加入しないこともある

常勤の役員は、報酬が小さくても原則として健康保険・厚生年金の被保険者になる。一方、名目的な非常勤役員で、他社の役員を兼ね、定期的な報酬もないような場合は、継続的な使用関係が認められず被保険者にならないことがある。判断は形式ではなく実態で行われる。

法人化後の加入義務と手続きは「法人化後の社会保険 ── 加入義務・保険料の計算・負担額シミュレーション」に、保険料がいくらになるかは「社会保険料の仕組み ── 経営者が負担する金額と削減のポイント」にまとめている。家族を役員にする前に、増える保険料の実額を必ず先に出しておきたい。


2026年の「壁」はいくらか

家族の報酬額を決めるとき、実際に効いてくる線は4本ある。令和8年度改正で金額が動いているので、去年の数字のまま考えないこと。

壁令和8年分の金額中身
配偶者控除が使える上限給与収入136万円以下合計所得62万円以下(改正前は58万円=給与123万円)
本人に所得税がかかり始める給与収入178万円超給与所得控除74万+基礎控除62万+加算42万
社会保険の扶養から外れる年収130万円以上60歳以上・障害者は180万円
19〜22歳の子の扶養(社保)年収150万円以上で外れる令和7年10月から。配偶者は対象外

数字の並びが分かりにくいので、順番に読むとこうなる。

  1. 136万円まで … 配偶者控除も使えて、社会保険の扶養にも入れる。いちばん効率がよい帯
  2. 130万円を超えたところ … 税より先に社会保険の扶養が外れる。ここが実質的な最初の崖
  3. 178万円まで … 本人に所得税はかからない(住民税は別の基準で先にかかる)
⚠️

最初に来る崖は「税」ではなく「社会保険」

配偶者控除の上限(136万円)より、社会保険の扶養の上限(130万円)のほうが低い。つまり手取りで最初に効くのは社会保険のほう。「配偶者控除が使える範囲だから大丈夫」と考えると、保険料で足をすくわれる。


家族を役員にしたからこそ使える3つの制度

役員にする本当の価値は、報酬の分散だけではない。役員でなければ使えない仕組みが付いてくる。

1. 社宅

家族役員の住まいも、会社契約の社宅にできる。賃貸料相当額を本人から徴収すれば、差額は会社の経費になり、本人に給与課税もされない。設定方法は「社宅制度で家賃を経費にする ── 役員社宅の節税効果と設定方法」で詳しく扱っている。

2. 出張日当

出張旅費規程を作れば、家族役員の出張にも非課税の日当を出せる。所得税も社会保険料もかからないまま現金を渡せる数少ない手段だ。規程の作り方と否認されない運用は「出張旅費規程で手取りを増やす」にある。

3. 退職金

役員である期間は役員退職金の勤続年数に乗る。退職所得は税負担が最も軽い所得なので、長く役員でいること自体が将来の節税になる。計算方法は「経営者の退職金で大幅節税 ── 退職所得控除の仕組みと計画的な積立」を参照。

💡

順番は「報酬を上げる」より先に「制度を使う」

報酬を上げれば所得税・住民税・社会保険料がすべて増える。一方、社宅と出張日当は保険料の対象にならない。まず制度を整えてから、足りない分を報酬で調整するほうが手取りは大きくなる。


個人事業主の「専従者給与」とは別物

法人化前と後で、家族への支払いの扱いは大きく変わる。

個人事業(青色申告)法人
名目青色事業専従者給与役員報酬
事前手続き届出が必要株主総会決議+議事録
金額の変更届出の範囲内期首から3か月以内に年1回
配偶者控除使えない(専従者は対象外)所得要件を満たせば使える
他に仕事を持てるか原則、専従が条件制限なし

見落とされやすいのが配偶者控除の行だ。個人事業では専従者給与を1円でも払うと配偶者控除は使えないが、法人の役員報酬にはその制限がない。報酬を136万円以下に抑えれば、役員報酬を払いながら配偶者控除も取れる。法人化を検討している人にとっては、地味だが効く違いだ。


よくある質問(FAQ)

Q1. 妻を役員にすれば、報酬はいくらでも経費にできますか?

できません。 職務の内容や会社の収益、同業・同規模の会社の水準からみて「不相当に高額」な部分は損金になりません。加えて、株主総会で決めた限度額を超えている部分も認められません。実態のない名目役員は、全額否認されることもあります。

Q2. 期の途中で家族役員の報酬を増やせますか?

原則できません。 定期同額給与の改定は、事業年度開始の日から3か月以内が原則です。それ以外では、役職が変わったなどの臨時改定事由か、経営が著しく悪化した場合の減額に限られます。「今期は利益が出そうだから12月から増額」は、増額分が経費になりません。

Q3. 役員にせず、パートとして雇ったほうが自由ではないですか?

同族会社では、みなし役員になる可能性があります。 株主グループの所有割合10%超・本人の所有割合5%超などの要件を満たし、経営に従事していると判断されると、従業員として払っていても役員報酬のルールがかかります。株を持たせていない家族なら、この心配はありません。

Q4. 非常勤の役員にすれば社会保険に入らなくて済みますか?

実態しだいです。 名目的な非常勤で、他社の役員も兼ね、定期的な報酬もない、といった実態であれば被保険者にならないことがあります。しかし「非常勤」という肩書きだけでは通りません。常時勤務している実態があれば加入対象です。

Q5. 配偶者控除と社会保険の扶養、どちらを優先して考えるべきですか?

社会保険です。 令和8年分では配偶者控除の上限が給与収入136万円なのに対し、社会保険の扶養は年収130万円。先に来るのは社会保険の壁で、しかも外れた瞬間の負担が大きいためです。130万円未満に収めるか、そこを大きく超えて設計するかの二択で考えます。

Q6. 大学生の子を役員にするのはどうですか?

制度上は可能ですが、実態の説明がより難しくなります。 なお社会保険の扶養については、19歳以上23歳未満の親族(配偶者を除く)の年間収入要件が令和7年10月から150万円未満に緩和されており、配偶者より枠が広い点は覚えておくとよいでしょう。

Q7. 家族役員に退職金を出すことはできますか?

できます。 ただし役員退職金も、在職期間・退職の事情・同業同規模の会社の支給状況からみて相当な額であることが必要です。実態のない役員に高額な退職金を出すと、不相当に高額な部分として否認されます。


まとめ

家族を役員にするかどうかは、次の順番で考えると迷わない。

  1. 実態があるかを最初に確認する。実態がなければ、どんな設計をしても否認される
  2. 社会保険の130万円を基準に報酬額を決める。税の136万円より先に効く
  3. 株を持たせている家族は、役員にしなくてもみなし役員になりうる
  4. 報酬を上げる前に、社宅・出張日当という保険料のかからない手段を使う
  5. 定期同額給与か事前確定届出給与か、手続きの型を決めて議事録を残す
💡

迷ったら「説明できるか」で判断する

家族役員の是非は、突き詰めると「税務調査でその金額を説明できるか」に尽きる。金額の根拠、担当している業務、それを裏づける記録。この3つを用意できないなら、報酬を下げるか、役員にしないほうがよい。

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