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社会保険料の仕組み ── 経営者が負担する金額と削減のポイント
税制解説 約12分で読めます

社会保険料の仕組み ── 経営者が負担する金額と削減のポイント

社会保険料は「見えない税金」

経営者にとって、社会保険料は最も大きな人件費コストの一つだ。

給与の約30%(会社負担+本人負担の合計)が社会保険料として徴収される。従業員30人の会社なら、年間で数千万円規模の負担になる。

しかし多くの経営者は、社会保険料の仕組みを正確に理解していない。仕組みを理解すれば、合法的な削減ポイントが見えてくる。


社会保険料の全体像

法人が負担する社会保険料は5種類。

保険会社負担本人負担対象者
健康保険約5.0%約5.0%全従業員+役員
介護保険約0.8%約0.8%40〜64歳の被保険者
厚生年金9.15%9.15%全従業員+役員
雇用保険0.95%0.55%従業員のみ(役員は対象外)
労災保険業種による(0.25〜8.8%)0%従業員のみ(役員は原則対象外)

会社負担の合計(概算)

項目料率(会社負担)
健康保険約5.0%
介護保険(40歳以上)約0.8%
厚生年金9.15%
雇用保険0.95%
労災保険(一般事業)0.3%
合計約16.2%

つまり、給与100万円の従業員を雇うと、会社は追加で約16.2万円の社会保険料を負担する

⚠️

社会保険料は「給与の3割」と覚えよう

会社負担(約16%)+ 本人負担(約15%)= 約31%。従業員の給与を決める際は、社会保険料の会社負担分を含めた「総人件費」で考える必要がある。


健康保険料の仕組み

協会けんぽと組合健保

項目協会けんぽ組合健保
運営全国健康保険協会企業・業界の健保組合
保険料率都道府県で異なる(約9.5〜11%)組合で設定(一般に協会けんぽより低い)
加入要件法人は自動的に加入常時700人以上の従業員(同業で3,000人以上も可)
付加給付なしあり(独自の上乗せ給付)

都道府県別の保険料率(2025年度、協会けんぽ)

保険料率が低い県と高い県:

都道府県料率(労使合計)
新潟県9.35%(最低水準)
東京都10.00%
大阪府10.34%
佐賀県10.97%(最高水準)

標準報酬月額等級表(抜粋)

等級標準報酬月額報酬月額の範囲
158,000円〜63,000円
10150,000円146,000〜155,000円
20300,000円290,000〜310,000円
30560,000円545,000〜575,000円
40980,000円955,000〜1,005,000円
501,390,000円1,355,000円〜

厚生年金の仕組み

保険料率

18.30%(労使折半で各9.15%)。2004年から段階的に引き上げられ、2017年に18.30%で固定された。

標準報酬月額の上限

厚生年金は65万円(32等級)が上限。報酬が月額100万円でも200万円でも、厚生年金の保険料は65万円ベースで計算される。

厚生年金の上限保険料 = 65万円 × 18.30% = 118,950円/月(労使合計)
会社負担 = 59,475円/月
本人負担 = 59,475円/月

標準賞与額の上限

賞与にかかる厚生年金は、1回あたり150万円が上限

150万円 × 18.30% = 274,500円(1回あたりの上限保険料)

雇用保険の仕組み

項目一般の事業農林水産・清酒製造建設業
労働者負担0.55%0.65%0.65%
事業主負担0.95%1.05%1.15%
合計1.50%1.70%1.80%
ℹ️

役員は雇用保険に加入できない

法人の代表取締役・代表社員は雇用保険に加入できない。兼務役員(使用人兼務役員)は、従業員としての部分について加入できる場合がある。


労災保険の仕組み

項目内容
負担者全額が事業主負担
料率業種により0.25〜8.8%
対象従業員のみ(役員は原則対象外)

主な業種の労災保険料率

業種料率
ソフトウェア開発0.3%
商業(小売・卸売)0.3%
金融・保険0.25%
飲食店0.3%
建築事業0.95%
林業5.2%

社会保険料の計算例

ケース: 従業員10人の会社(東京都、一般事業)

従業員月額報酬人数
社長(役員)80万円1人
管理職50万円2人
一般社員30万円7人

月額の社会保険料(会社負担分のみ):

対象健保+介護厚生年金雇用保険労災月額合計
社長45,820円59,475円--105,295円
管理職×258,000円91,500円9,500円3,000円162,000円
一般×7121,800円192,150円19,950円6,300円340,200円
月額合計607,495円
年額合計約729万円

従業員10人の会社で、年間約729万円が社会保険料の会社負担分

⚠️

給与以外の「隠れた人件費」

年間の給与総額が約4,200万円の会社で、社会保険料の会社負担が約729万円。つまり、給与の約17%が上乗せコストとしてかかっている。採用計画を立てる際は、この隠れたコストを必ず計算に入れること。


社会保険料の合法的な削減テクニック

テクニック1: 役員報酬の最適化

社会保険料は標準報酬月額に連動する。役員報酬を下げ、代わりに出張手当や社宅制度を活用すれば、手取りを減らさずに社会保険料を削減できる。

方法効果
出張旅費規程の整備出張手当は社会保険料の対象外
社宅制度の導入家賃の差額は社会保険料の対象外
通勤手当の適正化非課税限度額内なら社会保険料の対象だが節税効果あり

テクニック2: 賞与の設計

厚生年金の賞与上限は1回あたり150万円。賞与を年2回(合計300万円)に分散するより、年1回(150万円)にする方が厚生年金保険料は下がる場合がある。

ただし、健康保険の賞与上限は年間573万円なので、健康保険料は年間トータルで変わらない。

テクニック3: 給与の定時決定(算定基礎届)の活用

社会保険料は4〜6月の報酬を基に9月〜翌年8月の保険料が決まる

4〜6月の残業を減らす(または残業が少ない月にシフトする)ことで、標準報酬月額を下げられる可能性がある。

⚠️

残業調整は慎重に

4〜6月だけ意図的に残業を減らすのは、従業員の不満や業務の遅れにつながるリスクがある。実態に合わない調整は避けること。

テクニック4: 月額変更届のタイミング

固定的賃金が大幅に変動した場合、**随時改定(月額変更届)**で標準報酬月額が変わる。報酬が下がった場合は、速やかに届出を行い保険料を適正化する。

テクニック5: 選択制確定拠出年金(選択制DC)

従業員が給与の一部を確定拠出年金の掛金として拠出する制度。掛金部分は報酬から除外されるため、社会保険料の算定基礎が下がる。

メリットデメリット
社会保険料が下がる将来の厚生年金受給額が減る
掛金が所得控除傷病手当金の計算基礎が下がる
老後資金の形成原則60歳まで引き出せない

社会保険料の年間スケジュール

毎月

社会保険料の納付

当月分の保険料を翌月末までに納付(口座振替)

4月

雇用保険料率の確認

毎年4月に料率が見直される。概算保険料の確認

6月1日〜7月10日

労働保険の年度更新

前年度の確定保険料と当年度の概算保険料を申告・納付

7月1日〜7月10日

算定基礎届の提出

4〜6月の報酬を基に標準報酬月額を届出。9月から新保険料が適用

9月

新しい標準報酬月額の適用開始

算定基礎届の結果に基づく新保険料が適用される

随時

月額変更届(該当時のみ)

固定的賃金に大幅な変動があった場合に届出


社会保険料と税金の関係

法人側

社会保険料の会社負担分は全額が損金(経費)。法人税の計算上、課税所得を減らす効果がある。

社会保険料(会社負担)729万円 × 実効税率30% = 約219万円の法人税節税

個人側

従業員・役員が負担する社会保険料は、全額が社会保険料控除として所得税・住民税の計算上控除される。


従業員の社会保険料を最適化する方法

通勤手当の扱い

通勤手当は社会保険料の算定基礎に含まれる(所得税は非課税)。

ただし、合理的な経路・方法での通勤費は経費として必要なもの。通勤手当を削減するために在宅勤務を推進すれば、通勤手当が減る分だけ社会保険料も下がる。

現物給与の活用

食事の提供、社員旅行、健康診断など、福利厚生として現物で提供する場合は社会保険料の対象外になるケースがある(一定の要件あり)。

福利厚生社会保険料の対象
食事の補助(月額3,500円以下、本人50%以上負担)対象外
社員旅行(社会通念上妥当な範囲)対象外
健康診断・人間ドック対象外
住宅手当対象
家族手当対象

社会保険料の滞納リスク

リスク内容
延滞金納期限の翌日から年14.6%(最初の3ヶ月は年7.3%)
財産の差押え銀行口座、売掛金、不動産等
入札参加の制限公共事業の入札に参加できなくなる
融資への影響金融機関の審査でマイナス
⚠️

社会保険料の滞納は危険

税金と異なり、社会保険料は分割納付の相談が通りにくい。滞納が続くと比較的早期に差押えが行われる。資金繰りが厳しい場合は、早めに年金事務所に相談すること。


よくある質問(FAQ)

Q1. 社会保険料は年々上がるのですか?

厚生年金の保険料率は18.30%で2017年に固定された。健康保険料率は毎年見直されるが、大幅な変動は少ない。ただし、少子高齢化の進行により将来的な引上げの可能性はある。

Q2. パートやアルバイトの社会保険はどうなりますか?

2024年10月から、従業員51人以上の事業所では週20時間以上・月額8.8万円以上のパート等も社会保険の加入対象に。小規模事業所(50人以下)では、正社員の3/4以上の勤務時間・日数が基準。

Q3. 社会保険料を払わないとどうなりますか?

年金事務所からの督促→延滞金の発生→財産の差押え。悪質な場合は刑事罰もある。

Q4. 海外に住む役員の社会保険はどうなりますか?

日本の法人の役員として報酬を受けていれば、原則として日本の社会保険に加入。ただし、社会保障協定がある国の場合は特例あり。

Q5. 役員報酬を下げたら将来の年金はどうなりますか?

報酬を下げると標準報酬月額が下がり、将来の厚生年金受給額も減る。短期的な社会保険料の削減と長期的な年金受給額のバランスを考慮する必要がある。

Q6. 社会保険料は確定申告で取り戻せますか?

社会保険料控除として所得から差し引かれるため、所得税・住民税の計算上は考慮されている。ただし、社会保険料そのものが戻ってくるわけではない。

Q7. 業種を変更すると労災保険料率は変わりますか?

変わる。労災保険料率は業種ごとに異なるため、業種変更の届出を行うと料率が変わる。


まとめ

社会保険料は経営者にとって避けられない大きなコスト。

押さえるべきポイント:

  1. 給与の約30%が社会保険料(会社負担+本人負担)
  2. 会社負担分は約16% – 人件費計画に必ず織り込む
  3. 役員報酬の最適化で社会保険料をコントロールできる
  4. 出張手当・社宅制度は社会保険料の対象外
  5. **算定基礎届(4〜6月の報酬)**で翌年の保険料が決まる
💡

「払いすぎ」をチェック

標準報酬月額が実態と乖離していないか、定期的にチェックすること。報酬が下がったのに届出をしていないと、高い保険料を払い続けることになる。税理士・社労士と連携して適正化を図ろう。

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