法人設立にかかる費用 ── 株式会社 vs 合同会社を徹底比較
法人設立の費用を正確に把握しよう
「法人化を検討しているけど、いくらかかるのかわからない」という相談は非常に多いです。法人設立には**初期費用(イニシャルコスト)と維持費用(ランニングコスト)**の2つがあり、両方を正確に把握しないと「思ったより高くついた」という後悔につながります。
この記事では、株式会社と合同会社の費用をすべて洗い出し、どちらを選ぶべきかの判断基準まで詳しく解説します。
設立費用の比較 ── 株式会社 vs 合同会社
法定費用(必ずかかる費用)
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 定款の収入印紙代 | 4万円(電子定款なら0円) | 4万円(電子定款なら0円) |
| 定款認証手数料 | 3〜5万円 | 不要 |
| 登録免許税 | 15万円(資本金×0.7%、最低15万円) | 6万円(資本金×0.7%、最低6万円) |
| 謄本交付手数料 | 約2,000円 | 約2,000円 |
| 法定費用合計 | 約20〜24万円 | 約6〜10万円 |
定款認証手数料は資本金で変わる
2022年の法改正で、株式会社の定款認証手数料は資本金額に応じて3段階になりました。資本金100万円未満は3万円、100万〜300万円未満は4万円、300万円以上は5万円です。
電子定款で4万円を節約
紙の定款には収入印紙代4万円がかかりますが、電子定款なら0円です。以下のサービスを使えば無料で電子定款が作成できます。
| サービス名 | 費用 | 特徴 |
|---|---|---|
| freee会社設立 | 無料 | freee会計の契約が条件 |
| マネーフォワード会社設立 | 無料 | MFクラウドの契約が条件 |
| 弥生のかんたん会社設立 | 無料 | 弥生会計の契約が条件 |
| 自分で電子署名 | 約1〜3万円 | ICカードリーダー、電子証明書が必要 |
会計ソフト連携サービスがお得
freee会社設立やマネーフォワード会社設立は、設立後にそのまま会計ソフトを使い始められるのがメリットです。設立費用の節約と会計ソフト導入を同時に実現できます。
専門家に依頼した場合の費用
自分で設立する時間がない場合、専門家(司法書士・行政書士・税理士)に依頼できます。
依頼先別の費用比較
| 依頼先 | 報酬相場 | 対応範囲 |
|---|---|---|
| 司法書士 | 5〜15万円 | 定款作成、登記申請 |
| 行政書士 | 3〜10万円 | 定款作成(登記は不可) |
| 税理士(設立パック) | 0〜5万円 | 顧問契約とセットで設立費用を割引 |
| 会社設立代行サービス | 0〜5万円 | 顧問契約が条件で設立手数料0円も |
自分で設立 vs 専門家に依頼
| 自分で設立 | 専門家に依頼 | |
|---|---|---|
| 株式会社の総費用 | 約20万円 | 約25〜35万円 |
| 合同会社の総費用 | 約6万円 | 約11〜21万円 |
| 所要時間 | 1〜2週間 | 数日〜1週間 |
| 手間 | 多い | 少ない |
| ミスのリスク | あり | ほぼなし |
税理士の「設立0円」の仕組み
「設立費用0円」をうたう税理士事務所は、2〜3年の顧問契約が条件になっていることがほとんどです。月額顧問料が相場より高めに設定されているケースもあるため、トータルコストを必ず比較してください。
資本金の決め方 ── いくらにすべきか
法律上は1円から設立可能
会社法上、資本金は1円でも法人を設立できます。しかし、実務上は以下の理由で一定額が必要です。
| 資本金額 | メリット | デメリット | おすすめ度 |
|---|---|---|---|
| 1〜10万円 | 設立コスト最小 | 信用力ゼロ、銀行口座開設が困難 | △ |
| 10〜50万円 | コスト抑えめ | 信用力は低い | △ |
| 50〜100万円 | 最低限の信用力 | 運転資金が不足しがち | ○ |
| 100〜300万円 | バランスが良い | 特になし | ◎ |
| 300〜500万円 | 信用力が高い | 資金の準備が必要 | ◎ |
| 500〜999万円 | 信用力が非常に高い | 融資・許認可で有利 | ○ |
| 1,000万円以上 | 信用力最大 | 消費税が初年度から課税 | △ |
資本金で変わる3つの重要ポイント
1. 消費税の免税(1,000万円の壁)
資本金1,000万円未満の新設法人は、設立後2事業年度は消費税が免税になります(特定期間の課税売上が1,000万円を超えない場合)。1,000万円以上にすると初年度から課税事業者になるため、特別な理由がなければ999万円以下にしておきましょう。
2. 法人住民税の均等割
資本金によって法人住民税の均等割額が変わります。
| 資本金 | 従業員50人以下 | 従業員50人超 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 約7万円/年 | 約14万円/年 |
| 1,000万円超〜1億円以下 | 約18万円/年 | 約20万円/年 |
3. 許認可・融資の要件
一部の許認可(建設業、人材派遣業など)では資本金の最低額が定められています。
| 業種 | 必要な資本金 |
|---|---|
| 一般建設業 | 500万円以上 |
| 一般労働者派遣事業 | 2,000万円以上 |
| 有料職業紹介事業 | 500万円以上 |
おすすめの資本金額
一人社長の小規模法人なら100〜300万円がベストバランスです。信用力が確保でき、消費税の免税メリットも受けられ、法人住民税の均等割も最低額に抑えられます。
設立後のランニングコスト ── 法人維持にかかる費用
法人設立後は、個人事業にはなかった固定費が毎月・毎年発生します。設立前に必ずランニングコストを把握しておきましょう。
毎月かかるコスト
| 項目 | 月額目安 | 年額換算 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 税理士顧問料 | 2〜5万円 | 24〜60万円 | 規模・業種で変動 |
| 会計ソフト | 2,000〜5,000円 | 2.4〜6万円 | freee、MF等 |
| 社会保険料(会社負担分) | 給与の約15% | — | 役員報酬に応じて |
| バーチャルオフィス(利用する場合) | 5,000〜2万円 | 6〜24万円 | 自宅を本店にすれば不要 |
毎年かかるコスト
| 項目 | 年額目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 法人住民税(均等割) | 約7万円 | 赤字でも必ず発生 |
| 決算申告料(税理士) | 10〜20万円 | 顧問料とは別 |
| 登記変更(必要な場合) | 1〜3万円 | 役員改選、住所変更等 |
| 社会保険の算定基礎届 | 0円(自分で可能) | 年に1回、7月に届出 |
年間のランニングコスト合計(目安)
| 項目 | 最低限 | 一般的 |
|---|---|---|
| 税理士費用(顧問+決算) | 30万円 | 50〜80万円 |
| 法人住民税均等割 | 7万円 | 7万円 |
| 会計ソフト | 2.4万円 | 4万円 |
| その他 | 0円 | 5〜10万円 |
| 合計 | 約40万円 | 約70〜100万円 |
ランニングコストを甘く見ない
法人化の節税メリットが年間40万円以下の場合、ランニングコストで相殺されてしまいます。法人化の判断は、節税額とランニングコストの差額がプラスになるかで判断してください。
印鑑・備品にかかる費用
法人設立時には以下の備品も必要です。
| 項目 | 費用 | 必要度 |
|---|---|---|
| 法人実印 | 3,000〜1万円 | 必須 |
| 銀行印 | 3,000〜8,000円 | 推奨 |
| 角印(社印) | 3,000〜8,000円 | 任意 |
| 印鑑3本セット | 5,000〜2万円 | お得 |
| ゴム印(住所・社名) | 1,000〜3,000円 | 推奨 |
ネット通販なら3本セットで5,000〜8,000円程度で購入できます。最近は印鑑レスで運営する会社も増えていますが、法務局への届出には法人実印が必要です。
設立費用の全体像 ── 総まとめ
株式会社を自分で設立する場合
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| 登録免許税 | 150,000円 |
| 定款認証手数料 | 30,000〜50,000円 |
| 定款の収入印紙代 | 0円(電子定款) |
| 謄本交付手数料 | 2,000円 |
| 印鑑セット | 5,000〜10,000円 |
| 合計 | 約19〜21万円 |
合同会社を自分で設立する場合
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| 登録免許税 | 60,000円 |
| 定款認証手数料 | 0円(不要) |
| 定款の収入印紙代 | 0円(電子定款) |
| 謄本交付手数料 | 2,000円 |
| 印鑑セット | 5,000〜10,000円 |
| 合計 | 約7〜8万円 |
株式会社 vs 合同会社 ── どちらを選ぶべきか
合同会社がおすすめのケース
- 一人社長で小規模に事業を行う
- 設立コストを抑えたい
- 取引先が法人格さえあればOK
- スモールスタートで始めたい
- 将来的に上場は考えていない
株式会社がおすすめのケース
- 対外的な信用力が重要(大企業との取引)
- 将来的に上場を目指している
- 外部からの出資(投資家、VC)を受ける可能性がある
- 株式による従業員のインセンティブ設計をしたい
- 「代表取締役」の肩書きが必要
合同会社→株式会社への変更も可能
最初は合同会社で設立し、事業が軌道に乗ったら株式会社に組織変更することも可能です。費用は登録免許税6万円+官報公告費用3〜4万円で、約10万円程度です。
設立費用を安くする5つの方法
1. 電子定款を利用する(4万円節約)
紙の定款ではなく電子定款にすることで、収入印紙代4万円を節約できます。
2. 合同会社を選択する(9〜14万円節約)
株式会社と比べて登録免許税が9万円安く、定款認証も不要です。
3. 会計ソフトの設立サービスを利用する
freee会社設立やマネーフォワード会社設立なら、電子定款の作成が無料でできます。
4. 税理士の設立パックを利用する
顧問契約とセットで設立手数料を無料にしてくれる税理士事務所を活用します。ただし、顧問料のトータルコストを必ず確認しましょう。
5. 自分で手続きを行う
合同会社なら、すべての手続きを自分で行えば実費約6万円で設立できます。オンライン申請を活用すれば、登録免許税の軽減措置が適用される場合もあります。
FAQ ── よくある質問
Q1. 資本金は後から増やせますか?
はい、増資は可能です。ただし、登記変更が必要で、登録免許税(増資額×0.7%、最低3万円)と司法書士への依頼料(3〜5万円)がかかります。
Q2. 資本金は使ってしまっていいですか?
使えます。資本金は設立後に法人の銀行口座に移した後、事業資金として自由に使用できます。ただし、設立直後に全額使い切ると運転資金が不足するため、3〜6ヶ月分の運転資金は確保しておきましょう。
Q3. 法人化の費用は経費になりますか?
設立費用のうち、**創立費(登録免許税、定款認証費用等)**は法人の経費として処理できます。会計上は「繰延資産」として計上し、任意の時期に償却(経費化)できます。利益が出た年度に一括で経費にするのが一般的です。
Q4. 合同会社から株式会社への変更費用は?
約10万円です。内訳は登録免許税6万円、官報公告費用3〜4万円、登記手続き費用1〜2万円程度。司法書士に依頼する場合はさらに5〜10万円かかります。
Q5. 法人の銀行口座開設に費用はかかりますか?
口座開設自体は無料ですが、法人の銀行口座開設は審査が厳しく、資本金が少なすぎると開設を断られるケースがあります。メガバンクは特に厳しいため、最初はネット銀行(GMOあおぞらネット銀行、住信SBIネット銀行等)や信用金庫がおすすめです。
Q6. 毎年の税理士費用を安くする方法は?
記帳(仕訳入力)を自分で行い、決算申告のみ税理士に依頼する「決算申告のみプラン」を利用すれば、年間15〜25万円程度に抑えられます。ただし、日々の相談ができないデメリットがあります。freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計で自動仕訳を活用すれば、記帳の手間も軽減できます。
Q7. 法人設立後にすぐ必要になる費用は?
設立後1ヶ月以内に必要になる主な費用は以下の通りです。
- 税理士への初回相談・顧問契約: 0〜5万円
- 会計ソフトの年額: 2〜4万円
- 社会保険の届出: 0円(自分で可能)
- 法人の銀行口座開設: 0円
- 名刺印刷: 3,000〜5,000円
まとめ ── 法人設立費用の目安
| パターン | 設立費用 | 年間ランニングコスト |
|---|---|---|
| 合同会社(自分で設立) | 約7万円 | 約40〜100万円 |
| 合同会社(専門家に依頼) | 約15〜25万円 | 約40〜100万円 |
| 株式会社(自分で設立) | 約20万円 | 約40〜100万円 |
| 株式会社(専門家に依頼) | 約30〜40万円 | 約40〜100万円 |
設立費用は一度きりですが、ランニングコストは毎年かかります。法人化の費用対効果は、設立費用ではなくランニングコストと節税効果の比較で判断してください。
法人化のタイミングについては「法人化すべきタイミング」、具体的な設立手順は「法人設立の手順」をご覧ください。設立後は「役員報酬の決め方」が最初の重要な意思決定になります。