CEO Tax Guide
自分で経理をやる方法 ── 最低限やるべきことと便利ツール
経理・確定申告 約13分で読めます

自分で経理をやる方法 ── 最低限やるべきことと便利ツール

「経理って難しそう」「簿記の知識がないと無理では?」。こうした不安を持つ経営者は多い。しかし結論から言えば、個人事業主や小規模法人の経理は会計ソフトを使えば簿記の知識がなくてもできる。この記事では、経理初心者の経営者が自分で経理をやるための最低限の知識、具体的な手順、おすすめのツールを徹底解説する。


経理の全体像 ── やることは3つだけ

経理と聞くと複雑に感じるが、個人事業主・小規模法人がやるべきことは大きく3つ。

やること頻度所要時間内容
日々の記帳毎日〜週15〜15分/日お金の出入りを記録
請求書・領収書の保管その都度数分証拠書類の整理・保存
確定申告年1回数日〜1週間年間の決算と税金の申告

会計ソフトを使えば、銀行口座やクレジットカードとの連携で記帳の大半が自動化される。実質的な作業時間は月に2〜3時間程度で済むことが多い。

ℹ️

税理士に丸投げする選択肢も

年間30〜50万円程度で税理士に経理を丸投げすることもできる。売上が1,000万円を超えたら、自分でやるコスト(時間)と税理士費用を比較検討しよう。ただし、最低限の経理知識は経営判断のためにも持っておくべきだ。


会計ソフトの選び方 ── 2026年版比較

現在、個人事業主・小規模法人向けのクラウド会計ソフトは主に3つ。それぞれの特徴を詳しく比較する。

主要3サービスの比較

freeeマネーフォワード弥生会計オンライン
月額(個人)1,980円〜800円〜無料〜(白色) / 8,800円/年〜(青色)
月額(法人)2,380円〜2,980円〜26,000円/年〜
初心者向け度★★★★★★★★☆☆★★★★☆
銀行連携◎(3,200以上の金融機関)◎(2,500以上)○(主要銀行)
確定申告◎(ガイド付き)
スマホアプリ◎(レシート撮影対応)◎(レシート撮影対応)
電子帳簿保存法◎ 対応済み◎ 対応済み◎ 対応済み
インボイス制度◎ 対応済み◎ 対応済み◎ 対応済み
税理士連携◎(特に強い)

どれを選ぶべきか

💡

選び方の結論

  • 完全初心者 → freee(操作が最も直感的。「取引」を登録するだけで複式簿記が完成する)
  • 経理経験がある / 細かく管理したい → マネーフォワード(勘定科目の自由度が高い)
  • 税理士に見てもらう予定がある → 弥生会計(税理士の利用率が最も高い)
  • とにかく安く始めたい → 弥生会計(白色申告なら無料)

経理の基礎知識 ── これだけ知っておけばOK

勘定科目とは

お金の出入りを分類するためのラベル。「何にお金を使ったか」を示すもの。

経営者がよく使う勘定科目一覧

勘定科目内容具体例
売上高事業の収入売上、報酬、手数料
地代家賃事務所・店舗の賃料家賃、駐車場代
通信費通信に関する費用電話代、インターネット、サーバー代
旅費交通費移動に関する費用電車代、タクシー代、出張費
消耗品費少額の物品購入文房具、10万円未満の備品
交際費取引先との付き合い接待、贈答品、慶弔費
会議費会議に関する費用打ち合わせ時の飲食代
新聞図書費情報収集の費用書籍、新聞、有料メディア
広告宣伝費宣伝に関する費用Web広告、名刺、チラシ
外注費外部への業務委託デザイン、開発、ライティング
支払手数料各種手数料振込手数料、クレジット手数料
減価償却費固定資産の費用配分PC、車両、設備
租税公課税金関連印紙税、固定資産税、自動車税
損害保険料事業用の保険火災保険、賠償責任保険
福利厚生費従業員への福利厚生健康診断、社内イベント
研修費スキルアップの費用セミナー、オンライン講座
雑費上記に該当しないもの少額の雑多な支出
⚠️

「雑費」を多用しない

何でもかんでも「雑費」にすると、税務調査で中身を一つずつ確認されて面倒なことになる。できるだけ適切な勘定科目に分類すること。雑費は全体の経費の5〜10%以内に抑えるのが目安。

複式簿記と単式簿記

単式簿記複式簿記
記録方法家計簿のように収入と支出を記録「借方」と「貸方」の2面で記録
青色申告控除10万円65万円
難易度簡単やや複雑
会計ソフト利用時ソフトが自動で複式簿記にしてくれる

結論: 会計ソフトを使えば複式簿記は意識しなくてよい。「売上を入力」「経費を入力」するだけで、ソフトが自動的に借方・貸方を振り分けてくれる。

発生主義と現金主義

発生主義現金主義
認識タイミング取引が発生した時点お金が動いた時点
12月に仕事完了→12月の売上1月に入金→1月の売上
青色申告65万円控除◎ 必須× 不可

青色申告で65万円控除を受けるには発生主義での記帳が必要。つまり、請求書を発行した月(仕事が完了した月)に売上を計上し、支払いが翌月でも「未収金」として処理する。会計ソフトではこの処理も自動化されている。


日々の経理作業 ── 実践ガイド

毎日やること(5〜15分)

朝 or 夜

銀行・クレジットカードの明細を同期

会計ソフトの自動取込を実行。数クリックで完了。

同時に

自動仕訳を確認・承認

AIが提案する勘定科目を確認して承認ボタンを押すだけ。間違っていたら修正。

必要に応じて

現金払いのレシートを入力

アプリでレシートを撮影するか、手入力。なるべくキャッシュレスにすると楽。

💡

「溜めない」が最大のコツ

経理作業を溜めると、記憶が曖昧になりミスが増える。毎日5分でもいいから、こまめに処理する習慣をつけよう。実務では「週末にまとめて1週間分を処理」でも十分。ただし1ヶ月以上溜めるのは危険。

毎月やること(30分〜1時間)

チェック項目内容目的
売上の計上確認請求書を発行した分が全て計上されているか売上の漏れ防止
経費の入力漏れ確認未入力のレシートがないか経費の計上漏れ防止
未払い・未収の確認未払金・未収金の残高を確認キャッシュフロー管理
口座残高の照合会計ソフトの残高と実際の口座残高が一致するか記帳ミスの発見
請求書の発行当月分の請求書を発行・送付売上の回収

四半期ごとにやること(1〜2時間)

  • 消費税の仮計算(課税事業者の場合)
  • 利益の概算確認(節税対策の検討材料)
  • 資金繰りの確認(今後3ヶ月の収支予測)

年末〜確定申告期にやること

時期やること注意点
11月年末に向けた節税対策の検討小規模企業共済の掛金変更、経費の前倒し
12月帳簿の締め。棚卸し(在庫がある場合)12月31日時点の在庫を数える
1月前年の帳簿を最終確認。決算整理仕訳減価償却費、家事按分の計上
2月決算書の作成。確定申告書の準備会計ソフトが自動生成してくれる
3月15日まで確定申告書の提出(e-Tax推奨)期限厳守。1日でも遅れると控除が減る
3月31日まで消費税の申告・納付(課税事業者)振替納税なら4月下旬に引き落とし

確定申告の流れ ── ステップバイステップ

Step 1: 決算整理仕訳を入力

年間の通常取引の入力が完了したら、以下の決算整理仕訳を入力する。

決算整理項目内容
減価償却費の計上固定資産の当期分の費用計上PC購入費を4年で償却
家事按分の処理プライベート分を除外家賃の70%を自己負担に振替
棚卸資産の計上期末在庫の金額を確定商品在庫を数えて金額算出
前払費用・未払費用期間に対応する費用を調整12月分の家賃を1月に支払った場合
貸倒引当金の計上回収不能な売掛金への備え青色申告なら期末売掛金の5.5%
ℹ️

会計ソフトの決算機能を使おう

freeeやマネーフォワードには決算整理のガイド機能がある。「ここにチェックを入れてください」「この数字を入力してください」とステップバイステップで案内してくれるので、初心者でも迷わない。

Step 2: 決算書を作成

会計ソフトのボタン一つで以下が自動生成される。

  • 損益計算書(P/L): 1年間の収入と経費のまとめ
  • 貸借対照表(B/S): 12月31日時点の資産・負債の状態

Step 3: 確定申告書を作成

会計ソフトから確定申告書を作成。以下の情報を入力する。

  • 基本情報(住所、氏名、マイナンバー)
  • 社会保険料控除(国民健康保険、国民年金)
  • 生命保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 医療費控除(該当する場合)
  • ふるさと納税の寄附金控除

Step 4: e-Taxで電子申告

⚠️

e-Taxで申告しないと控除が減る

紙で提出すると青色申告特別控除が65万円→55万円に減額される。e-Taxで申告すれば65万円。マイナンバーカードとスマホがあれば自宅から申告可能。会計ソフトから直接送信できる機能もある。


青色申告 vs 白色申告 ── 結論は青色一択

比較項目青色申告白色申告
特別控除額最大65万円なし
記帳方法複式簿記(会計ソフトが自動)簡易簿記
赤字の繰越3年間可能不可
専従者給与全額経費にできる上限あり(配偶者86万円)
少額減価償却30万円未満を一括経費不可
貸倒引当金売掛金の5.5%を経費不可
届出必要(開業後2ヶ月以内)不要

会計ソフトを使えば、青色申告の「複式簿記」のハードルはゼロ。 65万円の控除を放棄して白色申告にする合理的な理由はない。詳しくは「青色申告のメリットと始め方」の記事で解説している。


経理で失敗しないための7つのルール

実務で多くの経営者を見てきた中で、経理で失敗する人に共通するパターンがある。以下のルールを守れば、大きなミスは防げる。

  1. 事業用と個人用の口座を分ける ── 混在すると仕訳が地獄になる。事業用の銀行口座とクレジットカードを必ず分けること
  2. 現金払いを減らす ── クレジットカード・電子マネーならデータが自動取込される。現金は手入力が必要
  3. レシートはその日のうちにスマホで撮影 ── 溜めると劣化して読めなくなる
  4. 経理作業は溜めない ── 最低でも週1回は処理する
  5. 摘要欄にメモを残す ── 「何のための支出か」を後で思い出せるように
  6. 口座残高と帳簿を毎月照合 ── ズレがあったらすぐに原因を調べる
  7. 確定申告は2月中に完了させる ── 3月に入ると焦ってミスが増える

経理の自動化テクニック

できるだけ手間を減らすための実践テクニックを紹介する。

自動化できるもの

作業自動化の方法使うツール
銀行明細の取込API連携会計ソフト
クレカ明細の取込API連携会計ソフト
勘定科目の振り分けAIによる自動仕訳会計ソフト
レシートの入力スマホ撮影→OCR会計ソフトのアプリ
請求書の発行テンプレート化会計ソフト or Misoca等
請求書の保存電子保存の自動化会計ソフト(電子帳簿保存法対応)

自動化できないもの(人間がやる必要があるもの)

  • 現金取引の記録
  • 自動仕訳の確認・承認(AIの精度は100%ではない)
  • 按分比率の設定
  • 決算整理仕訳の一部
  • 最終的な確定申告書の確認

よくある質問(FAQ)

Q1: 簿記の資格がなくても経理はできますか?

できる。会計ソフトを使えば、簿記の知識がなくても日々の記帳から確定申告まで完了できる。ただし、簿記3級程度の知識があると「なぜこの仕訳になるのか」が理解でき、ミスに気づきやすくなる。興味があれば学んでおいて損はない。

Q2: 会計ソフトの費用は経費になりますか?

もちろんなる。勘定科目は「通信費」または「支払手数料」。年間の会計ソフト費用はそのまま事業の経費として計上できる。

Q3: 確定申告を税理士に頼むといくらかかりますか?

個人事業主の場合、確定申告のみの依頼で10〜20万円程度が相場。月次の記帳代行も含めると年間30〜50万円。法人の場合は年間50〜100万円程度。売上規模、取引の複雑さ、仕訳数によって変動する。

Q4: 経理ソフトのデータは何年間保存すべきですか?

法定の帳簿保存期間は、青色申告で7年間(一部の書類は5年間)。電子帳簿保存法の対象となる電子取引データも7年間の保存が必要。クラウド会計ソフトなら自動でデータが保存されるが、念のためバックアップも取っておくと安心。

Q5: インボイス制度に対応するために何をすべきですか?

まず適格請求書発行事業者の登録を行う(税務署に申請)。登録番号が発行されたら、請求書にその番号を記載する。会計ソフトはインボイス対応の請求書テンプレートを用意しているので、設定するだけで対応完了。また、受け取った請求書がインボイスかどうかを確認し、適切に保存する体制を整えること。

Q6: 開業したばかりで売上がほとんどありません。経理は必要ですか?

必要。売上が少なくても、経費は発生している。開業費として計上できるものも多い。また、青色申告の届出をして赤字を記録しておけば、3年間の繰越控除が使える。将来利益が出たときに大きな節税になる。

Q7: 法人の経理は個人事業と何が違いますか?

法人は個人事業より複雑になる。主な違いは、法人税の申告(個人の確定申告より複雑)、社会保険の処理、役員報酬の設計、源泉徴収と年末調整など。法人の場合は税理士との顧問契約をおすすめする。


まとめ

自分で経理をやるのは、思っているほど難しくない。

  1. 会計ソフトを導入する ── 迷ったらfreee
  2. 事業用口座を分ける ── 個人と事業のお金を混ぜない
  3. 毎日5分、仕訳を確認する ── 溜めないのが最大のコツ
  4. 青色申告を選ぶ ── 65万円の控除を逃す理由がない
  5. e-Taxで確定申告 ── 紙だと控除が10万円減る

経理は「攻めの経営判断」の土台。自分の事業のお金の流れを正確に把握することが、節税にも資金繰りにも直結する。まずは会計ソフトの無料プランから始めてみよう。

他のカテゴリの記事