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年末調整と確定申告の違い ── 経営者はどちらも必要?
経理・確定申告 約11分で読めます

年末調整と確定申告の違い ── 経営者はどちらも必要?

年末調整と確定申告は「別の手続き」

まず大前提。年末調整と確定申告は目的が同じでも、手続きが全く異なる

項目年末調整確定申告
誰がやるか会社(雇用主)本人(納税者)
対象者給与所得者(会社員、役員)自営業者、給与以外の所得がある人等
対象期間1月〜12月の給与1月〜12月のすべての所得
期限翌年1月31日翌年3月15日
提出先税務署(会社が提出)税務署(本人が提出)
精算される税金所得税所得税

年末調整とは

仕組み

会社は毎月の給与から所得税を源泉徴収(天引き)している。しかし、この金額は「概算」。

年末調整は、1年間の正確な税額を計算し、源泉徴収の過不足を精算する手続きだ。

年間の正確な所得税 - 毎月源泉徴収した合計 = 過不足額
→ 多く引きすぎていた場合: 還付(12月の給与で返す)
→ 少なかった場合: 追徴(12月の給与から引く)

年末調整で適用できる控除

控除内容最大控除額
基礎控除全員に適用(所得2,500万円以下)48万円
配偶者控除配偶者の所得が48万円以下38万円(70歳以上は48万円)
配偶者特別控除配偶者の所得が48〜133万円最大38万円
扶養控除16歳以上の扶養親族38〜63万円
生命保険料控除生命保険・介護保険・個人年金最大12万円
地震保険料控除地震保険料最大5万円
社会保険料控除健康保険・年金等全額
小規模企業共済等掛金控除iDeCo・小規模企業共済全額
住宅ローン控除2年目以降年末残高の0.7%

年末調整で対応できない控除

以下の控除は、確定申告でしか適用できない:

  • 医療費控除
  • 寄附金控除(ふるさと納税含む) ※ワンストップ特例を除く
  • 雑損控除
  • 住宅ローン控除(初年度)

確定申告とは

仕組み

確定申告は、1年間のすべての所得を自分で申告し、税金を計算・納付する手続き

確定申告が必要な人

該当条件具体例
給与収入が2,000万円超高額な役員報酬を受け取っている
2か所以上から給与をもらっている複数の会社から報酬がある
給与以外の所得が20万円超不動産所得、副業、株式譲渡
個人事業主フリーランス、自営業
不動産を売却した譲渡所得がある
医療費控除等を受けたい年末調整で対応できない控除
年末調整をしていない中途退職して再就職していない場合等
⚠️

経営者は確定申告が必要なケースが多い

経営者は役員報酬以外の所得(不動産、株式、配当等)がある場合が多く、確定申告が必要になるケースが多い。年末調整だけで完結すると思い込まないこと。


経営者の立場は「二重」

経営者の特殊な立場を整理する。

法人の「雇用主」としての立場

  • 従業員と自分(役員)の年末調整を行う義務がある
  • 法定調書(源泉徴収票等)を税務署に提出する
  • 翌年1月31日が期限

個人の「納税者」としての立場

  • 自分の確定申告が必要な場合がある
  • 役員報酬以外の所得がある場合は必須
  • 翌年3月15日が期限

経営者の確定申告が必要なケース

ケース1: 役員報酬が2,000万円超

年間の給与収入が2,000万円を超えると、年末調整の対象外。自分で確定申告を行う必要がある。

ケース2: 複数の会社から報酬を受けている

複数の法人の役員を兼務している場合、主たる給与以外の所得が20万円を超えると確定申告が必要。

ケース3: 不動産所得がある

個人でマンション・アパートを所有し、賃貸収入がある場合。

ケース4: 株式・配当の所得がある

自社株の配当、投資による株式売却益がある場合(特定口座の源泉徴収ありを除く)。

ケース5: 医療費控除・ふるさと納税の控除を受けたい

年末調整では対応できないため、確定申告で申請する。


年末調整の実務スケジュール

10月

年末調整の準備開始

従業員に「扶養控除等申告書」「保険料控除申告書」を配布

11月上旬

従業員から書類を回収

保険会社の控除証明書、住宅ローンの残高証明書等も回収

11月下旬

年末調整の計算

1年間の給与総額と源泉徴収税額を確定し、過不足を計算

12月

精算・還付

12月の給与で過不足額を精算。多くの場合は還付(多く引きすぎた分を返す)

1月31日

法定調書の提出

源泉徴収票、給与支払報告書を税務署・市区町村に提出


確定申告の実務スケジュール

1月

書類の準備

源泉徴収票、支払調書、医療費領収書、ふるさと納税の証明書等を準備

2月16日〜

確定申告の受付開始

e-Tax(電子申告)なら1月上旬から提出可能

3月15日

確定申告の提出期限

所得税の確定申告書を提出。期限後申告は延滞税・加算税のリスク

3月15日

所得税の納付期限

振替納税を選択すると4月中旬に口座引落し

6月頃

住民税の通知

確定申告の内容に基づき、住民税の通知が届く


会社としての年末調整の義務

法人の経営者として、以下の義務がある。

1. 源泉徴収義務

従業員・役員の給与から毎月所得税を天引きし、翌月10日までに税務署に納付する。

届出内容
源泉所得税の納付毎月10日(特例: 半年に1回)
納期の特例従業員10人未満の場合、7月10日と1月20日の年2回

2. 法定調書の提出

書類提出先期限
給与所得の源泉徴収票税務署1月31日
給与支払報告書市区町村1月31日
法定調書合計表税務署1月31日
ℹ️

一人社長でも必要

従業員がいなくても、自分(役員)の役員報酬について年末調整と法定調書の提出が必要。一人社長だから不要、ということはない。


経営者が確定申告で節税できるポイント

1. 医療費控除

年間の医療費が10万円(所得200万円未満は所得の5%)を超えた部分が控除対象。

対象具体例
対象になる病院の診療費、処方薬代、入院費、歯科治療費
対象にならない美容整形、予防接種(一部例外あり)、サプリメント
上限200万円

2. ふるさと納税(寄附金控除)

自己負担2,000円で、住民税・所得税が控除される。

控除上限の目安(独身・扶養なしの場合):

年収控除上限目安
500万円約6.1万円
700万円約10.8万円
1,000万円約17.6万円
1,500万円約38.9万円
2,000万円約56.5万円
💡

ふるさと納税は経営者にこそ有効

所得が高いほど控除上限が大きくなる。年収2,000万円の経営者なら、約56万円分の返礼品を実質2,000円で受け取れる計算。

3. 不動産所得の損益通算

個人所有の不動産で赤字が出た場合、給与所得(役員報酬)と損益通算できる。

4. 株式の損失繰越

上場株式の売却損は、翌年以降3年間繰り越して翌年の利益と相殺できる(確定申告が必要)。


e-Taxの活用

e-Taxのメリット

メリット内容
自宅で完結税務署に行く必要なし
還付が早い3週間程度(書面は1〜2ヶ月)
24時間受付深夜でも提出可能
添付書類省略源泉徴収票等の添付が不要(保管は必要)
青色申告特別控除e-Taxなら65万円控除(書面は55万円)

e-Taxの利用方法

  1. マイナンバーカード方式 – マイナンバーカード + ICカードリーダー(またはスマホ)
  2. ID・パスワード方式 – 税務署で発行されたID・パスワードを使用

確定申告を忘れた場合のペナルティ

ペナルティ税率内容
無申告加算税15〜20%期限内に申告しなかった場合
延滞税年2.4%〜8.7%(2026年)納付が遅れた日数に応じて
重加算税35〜40%意図的に申告しなかった場合
⚠️

期限後でも早めに申告を

期限を過ぎても自主的に申告すれば、無申告加算税は5%に軽減される。「忘れていた」と気づいたら、すぐに申告すること。


年末調整と確定申告の使い分けチェックリスト

年末調整だけでOKのケース

  • 役員報酬が2,000万円以下
  • 報酬を受けている法人は1社のみ
  • 給与以外の所得が20万円以下
  • 医療費控除・ふるさと納税の控除が不要
  • 住宅ローン控除は2年目以降

すべてに該当する場合のみ、年末調整だけで完結

確定申告が必要なケース

  • 上記のいずれか1つでも該当しない
  • 経営者は確定申告が必要なケースがほとんど

よくある質問(FAQ)

Q1. 年末調整と確定申告、両方やる必要がありますか?

両方やるケースが多い。法人として従業員(自分を含む)の年末調整を行い、個人として確定申告を行う。年末調整は会社の義務、確定申告は個人の義務。

Q2. 確定申告の期限に間に合わない場合は?

期限後でも申告は可能。ただし無申告加算税と延滞税がかかる。税理士に依頼すれば、期限内の申告がほぼ確実

Q3. 確定申告は税理士に任せるべきですか?

経営者は税理士に任せるのが無難。不動産所得や株式の所得がある場合、計算が複雑。申告ミスのリスクを考えると、税理士報酬(5〜15万円程度)は十分に見合う。

Q4. 住民税は別途申告が必要ですか?

確定申告をすれば住民税の申告は不要。確定申告の情報が市区町村に自動で共有される。

Q5. 役員報酬以外の所得が20万円以下なら確定申告は不要?

所得税の確定申告は不要だが、住民税の申告は必要。住民税には「20万円以下なら申告不要」のルールがない。

Q6. ふるさと納税のワンストップ特例を使えば確定申告は不要?

ワンストップ特例は「確定申告をしない人」のための制度。確定申告をする場合はワンストップ特例が無効になるため、確定申告でふるさと納税分も申告する必要がある。

Q7. 法人の決算と個人の確定申告は別のものですか?

全く別物。法人の決算は法人税の申告(事業年度終了後2ヶ月以内)、個人の確定申告は所得税の申告(3月15日まで)。経営者は両方の手続きが必要。


まとめ

年末調整と確定申告の違いを整理すると:

年末調整確定申告
主体会社個人
対象給与所得のみすべての所得
経営者の関わり法人として実施する義務個人として申告する義務(該当者)

経営者がやるべきことは:

  1. 法人として従業員・自分の年末調整を確実に行う
  2. 個人として確定申告が必要かどうかを確認する
  3. 不明点は税理士に相談して、申告漏れ・控除漏れを防ぐ
💡

申告漏れは高くつく

確定申告を忘れると、無申告加算税(15〜20%)と延滞税が課される。一方、控除の申告漏れは単純に「損」。どちらも避けるために、税理士と一緒に年間の税務スケジュールを組むことをおすすめする。

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